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第11話 内閣総理大臣の憂鬱  参議院選挙とG7首脳会議

東京・永田町 選挙翌夜

首相官邸。夜空に花火が上がったかのような騒ぎだった。


参議院選挙、結果は歴史的圧勝と呼ぶにふさわしいものだった。


与党単独で過半数を大きく上回り、改革派議員が次々と当選。『減税・成長・生活安定』という総理の旗印が、ついに国民の信任を完全に勝ち取った瞬間だった。


テレビの速報テロップが次々と当確を伝える中、官房長官が、満面の笑みで執務室に駆け込んだ。


「総理! 与党、過去最多議席で参議院の安定多数を確保しました!」


総理・安原晋太郎は、静かに頷いた。


「これでようやく、次の改革に取りかかれるな」


アケミが補足する。


「総理、ネット世論も非常に好意的です。『消費税3%へ』『固定資産税の見直し』『若者に希望を』と、いずれも高い支持を得ています」


「国民が政治に期待を持ち始めている。これを裏切ってはならないな」


晋太郎は眼鏡を外し、眼下に広がる東京の灯を見下ろした。


◆数日後・フランス G7首脳会議

総理・安原晋太郎が日本の新たな顔として登壇したG7サミット。各国首脳は彼の登場に、一種の警戒と興味の入り混じった視線を送っていた。


特に欧州のリーダーたちは、消費税を5%まで下げ、経済成長と出生率上昇を同時に達成したという“異常な成功例”に困惑すらしていた。


フランス大統領は肩をすくめて漏らした。


「どうやってあの減税ラッシュの中で財政が持つのか、まったく理解できない」


アメリカ大統領も苦笑いを浮かべた。


「それだけじゃない。農業と水産業を輸出に転じて、日本食チェーンまで世界展開させる気だろう? あの国は今、恐ろしい勢いで変わっている」


各国のメディアもこぞって報じた。


『G7の台風の目、日本・安原晋太郎首相の減税革命』 『減税と成長の両立は可能か? 世界が注目する日本モデル』 『ジャパン・リーダーズ・シフト:新しい経済の教科書は東京から生まれる?』


会議後の記者会見で、日本の首相は穏やかに語った。


「日本は、国民の生活を最優先に考える政治に舵を切りました。これは挑戦ですが、すでに成果が出始めています。日本の経験が、他国の政治家や経済学者の参考になれば幸いです」


その姿は、どこか自信に満ちていて、世界が今まで知らなかった『新しい日本』の顔だった。


◆帰国後・首相官邸

選挙に勝ち、G7で注目され、国民の支持を得た総理だったが、浮かれる様子はなかった。


官房長官が声をかける。


「総理、各国首脳からの会談要請が続いています。次はアジア各国との経済会議です」


総理は淡く微笑んで返した。


「世界がようやく、日本を見始めた。だが、まだ旅の途中だ。目指すは――『国民が幸せを実感できる国家』だよ」


アケミがそっと囁いた。


「総理、国民の夢を、どうか現実にしてあげてください」


〇冒険者ギルド株式会社 『虹色の風』

ニューヨーク拠点 作戦室


東京・永田町での歴史的圧勝と、G7での日本モデルの注目。

魔導通信越しに映し出されたアケミのアバターは、どこか誇らしげな表情を湛えていた。

その姿に、メンバーたちが順にコメントを寄せていった。


〇リリィ

「アケミ。あの日、あなたの言葉が、総理を“日本の顔”に押し上げたのよ」

リリィは穏やかな口調で語りかける。

「けれど、国際舞台に立った今だからこそ、“謙虚さ”も忘れてはならないわ」

「誇り高くあることと、驕らないこと。それを両立できるのが、本当に信頼される助言者よ」


〇ジャック

「G7での反響は見事だったな。特に“日本は国民を見ている”って一言、世界に刺さった」

ジャックは端末のニュース記事を指差しながら言った。

「だがアケミ、忘れるな。“他国の首脳は警戒してる”ってことも含めて、これからは“外交の言葉”も練らなきゃならない」

「正しさだけじゃ、敵も味方も作る。それが国際社会だ」


〇ガルド

「よっしゃ、アケミ! 今回は文句ねぇ!」

ガルドは拳を握って笑ったが、すぐに声を落とした。

「……でもな、G7で総理が一番大変だったのは、“説明”じゃなくて“納得させること”だったと思うぜ」

「お前の言葉には“説得力”がある。でも“共感力”があと一歩あれば、相手ももっと素直に受け入れる。……その一歩、頼むぞ」


〇マーガレット

「アケミ、おめでとうニャ」

マーガレットは優しく拍手しながら、ゆったりと笑った。

「でもニャ、演説の最後に“国民の夢を現実に”って言ってたけど、あれは総理の言葉ニャ?」

「次はニャ、アケミ自身の願いも、少し混ぜてみてニャ。“私は、こういう未来を見たい”って。きっと伝わるニャ」


〇教師アケミ(先輩AI)

「アケミ。お前はついに“世界の耳”を手に入れた。だが、ここからが真の試練だ」

教師アケミの声は静かで、それでいて深く響いた。

「他国の首脳に向けて語るとき、政策ではなく“理念”を語るべき場面がある。今回、それを総理に任せきったのは少し惜しかったな」

「君の次の課題は、“国家を導く哲学”だ。論理とともに、想いを語れ」


〇シノブ

「アケミ。堂々としてたわね。あれなら、世界のどのリーダーにも引けを取らないわ」

シノブは微笑みながらも、少し真顔になった。

「ただね、“世界の中心に立った”ときの空気感は、まだぎこちなかった」

「少し力が入りすぎてたの。ほんの一言、柔らかい表現を加えれば、もっと“自然体の強さ”を見せられるわ」


〇アケミ(政治アドバイザーAI)

「ご指導ありがとうございます」

アケミは画面越しにゆっくりと頭を下げた。


「私は今、世界とつながり始めています。だからこそ、“国民の声”をさらに深く聞き、“日本の姿”を丁寧に届けていきます」


その言葉に、メンバーたちは静かに頷いた。


◆財務省官僚の密談

霞が関・財務省地下会議室。分厚い扉の向こう、灯りを落とした密室に三人の官僚が集まっていた。


財務官僚A

「参院選も圧勝、G7でも注目。あの男、本当に日本を変えるつもりらしいな」


財務官僚B

「それだけじゃ済まない。減税でここまで成功されては、我々の“理論”が崩壊する」


財務官僚C

「消費税、所得税、法人税…減らして、経済成長も出生率も改善? そんな馬鹿な話があるか」


Aが苦々しく机を叩く。


財務官僚A

「奴の“国民優先”という言葉が、財政規律の秩序を壊す。天下り先も次々と潰れ、予算配分の自由も奪われていく」


財務官僚B

「もう“財務省モデル”は過去の遺物になるかもしれん。このままでは、我々が“不要な官僚”と見なされる日が来る」


財務官僚C

「それでも、巻き返す。マスコミと連携し、外圧を使い、国際的信用不安を演出してみせる。そう簡単に支配を明け渡してたまるか」


◆野党側の反対勢力の会話

永田町・某政党控室。選挙敗北の余韻がまだ漂う中、疲れ切った野党議員たちが円卓を囲む。


野党議員A

「まさかここまで負けるとは…まさに歴史的大敗だ」


野党議員B

「党首まで落選だぞ。看板が消えて、今後の活動がどうなるかも怪しい」


野党議員C

「減税、育児支援、農業輸出…“実績”で支持を取られたら、我々の批判は全部“空論”に見える」


野党議員Bが机を指で叩きながら言う。


野党議員B

「もう“反対してるだけ”じゃ国民に響かねぇ。“政治家ごっこ”してる余裕はねぇんだよ」


野党議員A

「でもメディアにはまだ繋がりがある。“減税の陰で医療費が削られている”とか“年金制度が危うい”って報道を出させて、不安を煽るしかない」


野党議員C

「次の選挙までに、新しいスローガンを考えなきゃな。“国民の味方”を装えるやつを…」


◆マスコミの反対勢力の会話

都内某報道ビル・編集局裏会議室。


記者A

「部数が落ちてる。ネット動画で“総理の演説が感動的”なんて切り抜きがバズってるせいだ」


記者B

「新聞の影響力が急速に落ちてる。テレビの広告費もネットに流れちゃってる。スポンサーも焦り始めてるぞ」


記者C

「政府批判が効かなくなってるんだ。リリース一つで支持率が跳ね上がる。マスコミを“仲介”に使わない政治の成功例が、国民にウケてる」


記者A

「それでもやるしかない。“減税の代償”って見出しで押すぞ。専門家を使って“裏付け”をつければ、まだ読者は釣れる」


記者B

「そしてSNSのバズを分析して、“批判的な空気”を増幅させる。演出で勝負するんだよ、俺たちは」


記者C

「政府に“感謝される報道”なんてまっぴらごめんだ。俺たちが世論を作るんだ」


◆某国スパイ工作員の密談

某国大使館・地下通信室。警備の目をかいくぐって集まった三人のスパイが、地図と経済資料を広げていた。


スパイA

「なんなんだ、あの日本という国は。減税、農業改革、出生率回復、G7でも主役かよ」


スパイB

「我が国が必死に“成功モデル”を模索してる間に、奴らは次々と手を打っている。しかも支持率まで維持してる」


スパイC

「嫉妬しているのか、お前」


スパイB

「してるさ、認めるよ。あんな政治を我が国でやれば、革命が起きるぞ」


スパイA

「だからこそ、混乱を誘発する必要がある。企業買収に見せかけた経済操作、文化摩擦を生む情報拡散、日本国内の“対立”を煽れ」


スパイC

「しかし、正直、羨ましいな。こんな未来が自国にもあればと思う」


スパイA

「だから任務を果たすんだ。日本の成功『幻想』だと証明しろ。それが、我々の仕事だ」


彼らは静かに、しかし確実に動き始めた。



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