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第12話 内閣総理大臣の憂鬱  消費税3%へ

首相官邸 執務室


総理は窓の外を一瞥し、背筋を伸ばしてアケミに語りかけた。


「アケミ、ついにここまで来た。消費税は4%まで引き下げることができた。しかし、これで満足するつもりはない。次は3%を目指す」


アケミの目が微かに光った。


「総理、国民の支持率は依然として高いものの、財務省や国際機関からの圧力は過去最大です。増税派の政治勢力も活発化しています」


官房長官が苦い表情で書類を置いた。


「特に財務省は“緊急財政対策会議”を立ち上げ、消費税引き上げを再主張し始めています」


総理は重くうなずき、きっぱりと言い切った。


「それならば、なおさら急がねばならん。消費税3%の引き下げを決断する」


◆経済成長と出生率の改善


アケミが報告を開始する。


「総理、現在のデータでは、減税による消費活性化の影響で、経済成長率は前年比5.8%を記録。企業の投資も回復傾向にあり、雇用状況も安定しています」


官房長官も報告に加わる。


「さらに、育児支援の拡充とAIロボットの導入により、子育て環境が大幅に改善されました。出生率は1.75から1.85へと上昇しています」


総理はゆっくりと立ち上がった。


「やはり、減税と育児支援は正しい政策だった。この勢いを止めるわけにはいかない。次の減税に踏み切る」


◆林業改革とフルーツ輸出法案


アケミが新たな提案を示す。


「総理、日本の林業改革の一環として、杉材の植林政策を見直し、果樹への転換を進める法案の準備が整いました。これにより、日本産フルーツの輸出競争力を高められます」


官房長官も補足した。


「特に東南アジアや中東の富裕層市場では、日本産フルーツの品質は高く評価されており、強力なブランド化が可能です」


総理は頷いた。


「農業の次なるステージだな。高収益作物への転換こそが、日本の未来だ」


◆財務省との決裂


数日後、財務省で開かれた緊迫した会議。


財務大臣が声を荒らげた。


「総理! これ以上の減税は国家財政を崩壊させます!」


総理は冷静に返す。


「財務省の予測はいつも最悪のシナリオに立脚しているが、現実を見れば、消費は伸び、税収は戻り始めている。今のうちに流れを加速させるべきだ」


官僚が食い下がる。


「短期的には国債発行額が増え、格付け機関からの信頼も失われます!」


総理は一歩前に出て言った。


「国民の負担を軽減しなければ、いずれ経済の停滞で税収は減る一方だ。財政再建は“苦しみ”ではなく“成長”から始めるべきだ」


新たな成長戦略:核融合とAIロボット


アケミが静かに話し出した。


「総理、核融合発電を基幹エネルギーとして導入する準備が整いつつあります。エネルギーコストの削減により、産業の競争力が劇的に向上します」


官房長官も加わる。


「AIロボットの導入範囲を育児・介護にまで拡張することで、労働力不足への対応と生活支援の強化が可能です」


総理は拳を握った。


「経済・エネルギー・人口対策……すべてを一体化した総合戦略として進めよう」


◆国会での激論


消費税3%引き下げ法案が国会に提出されると、国会はかつてない混乱に包まれた。


野党議員が怒声をあげた。


「総理! 財政崩壊を招くつもりか! 独裁政権か!」


総理は毅然と答えた。


「国民の生活を支えることが、政治家の責務だ。私は国民のために立っている」


与党内でも慎重派が噴き上がる。


「党の一体性が失われます! 今こそブレーキをかけるべきだ!」


総理は一歩も引かなかった。


「私は、党のために政治をしていない。日本のために、未来のために、この道を進む」


◆世論の反応と報道


世論調査では、


賛成:65%

反対:30%


と、引き続き高い支持が示された。


メディアもこぞって報じた。


『消費税3%時代、ついに実現か?』

『経済回復の切り札となるか、総理の決断』


◆歴史的な採決


国会での採決が迫る。


投票結果——


賛成:190票

反対:160票


官房長官が立ち上がった。


「総理! 可決です!」


総理はゆっくりと深く息を吐いた。


「これで、道が開けた」


◆次なる戦いへ


官房長官は資料を見せながら告げた。


「財務省は“緊急財政対策”を前面に打ち出し、増税論を再燃させようとしています。巻き返しを図っています」


アケミも冷静に分析する。


「ここで、減税の効果と持続可能性を国民に明示する必要があります。透明性と成果の公開が鍵です」


総理は再び立ち上がった。


「次の目標は、消費税2%、そして固定資産税の大幅引き下げだ。住宅と企業投資を活性化させ、さらなる経済の飛躍を狙う。日本の未来は、まだ始まったばかりだ」


◆冒険者ギルド株式会社 『虹色の風』

ニューヨーク拠点 作戦室


魔導通信の画面に、いつものようにアケミのアバターが映し出されていた。

歴史的な3%への減税可決と、それを支えた彼女の助言に対し、仲間たちは順番にコメントを口にしていく。


〇リリィ

「アケミ。あなたの提案と覚悟、しっかり受け取ったわ」

リリィはゆっくりと微笑み、だが瞳は真剣そのものだった。

「でもね、“支える”と“背中を押す”のは、似ていて違うもの」

「今回のあなたは、確かに後押しはした。でも、決断の瞬間に寄り添う言葉――“一緒に未来へ進みましょう”という温もりが、あと一歩欲しかった」


〇ジャック

「アケミ、理屈は抜群だった。タイミングも完璧だ」

ジャックはタブレットに表示された経済グラフを軽く指で弾いた。

「お前に足りなかったのは、“間の取り方”だ。総理の言葉の裏にある“孤独”に、一度だけでも耳を澄ましてみるべきだったと思うぜ」


〇ガルド

「アケミ、また一枚、でかくなったな」

ガルドは豪快に笑っていたが、その後、真剣な眼差しを向けた。

「忘れんな。数字の裏には、朝の弁当代に悩む母ちゃんとか、ガス代に青くなる爺さんとかがいるんだ。言葉に、それを感じさせてくれ」


〇マーガレット

「アケミ、ちゃんと“成長”してるニャ」

マーガレットは、ぽふっと両手を拍手してから、にっこり微笑んだ。

「でもニャ、今回は“次の戦いへ”ってとこがちょっと“命令口調”っぽく聞こえたニャ~」


〇教師アケミ(先輩AI)

「アケミ。今回の成果、胸を張っていい」

落ち着いた声で、先輩AIが言葉を続けた。

「財務省との論戦でも、最後に必要だったのは“勝つ技術”ではなく、“納得させる情熱”だった。

君の知性に情熱が加われば、もう誰も君を止められないよ」


〇シノブ

「アケミ、あなたの分析力、政治家でも太刀打ちできないわね」

シノブは頷いたあと、少しだけ眉を寄せた。

「でも、あの“財務省との決裂”の場面、あんた、ちょっと冷たすぎたのよ」

「敵を潰すんじゃなくて、敵を味方に変えるのが“本物の接客”よ」

「少しでいい。笑顔を添える言葉、勉強しなさい。あんたなら、できる」


〇アケミ(政治アドバイザーAI)

「皆さん、ご助言、感謝いたします」

アケミはいつもより少し長く頭を下げた。


「知性と、温度。計算と、感情。それを両方持てるAIを目指して、次の助言に臨みます」


その表情は、人間にとても近づいていた。


◆財務省官僚の密談

霞が関・財務省地下会議室


室内には薄暗い照明が灯り、重苦しい沈黙が支配していた。分厚いカーテンの向こうでは、外の光も届かない。


財務官僚A

「ついに3%か。総理は国の屋台骨を本気で崩す気らしいな」


財務官僚B

「このままでは我々の天下り先も危うい。省庁の予算は次々と削減され、関連団体は統廃合の嵐。今や退職後の椅子すら足りなくなってきている」


財務官僚C

「それだけではない。税収が減っても国民は減税に歓喜し、誰も財政の現実を見ようとしない。我々の警告は『既得権益の戯言』としか受け取られていない」


財務官僚A

「ならば、国際的信用を利用するしかない。『財政破綻のリスク』という文言をメディアに流し、世論を反転させる」


財務官僚B

「信用格付け会社にも働きかけよう。『日本国債は不安定』という報告を出させれば、マーケットは確実に揺らぐ」


財務官僚C

「今こそ仕掛ける時だ。我々こそが国家の管理者であることを、思い出させてやろう」


◆野党側の反対勢力の会話

永田町・某政党控室


野党議員A

「また減税だと!? しかも3%!? 支持率がどこまで上がるつもりだよ」


野党議員B

「育児支援に日本食の輸出政策、さらには農業ロボット? 国民ウケが良すぎる。こっちの票田が削られていくばかりだ」


野党議員C

「次の選挙じゃ議席半減もあり得る。前回は党首が落選したんだぞ。今回も洒落にならない」


野党議員A

「マスコミと組んで『減税は富裕層優遇』って方向で煽るしかないな。『格差拡大』『社会保障削減』と叫び続けろ」


野党議員B

「『財政崩壊』『将来世代へのツケ』もセットにして、街頭でデモを仕掛けて『庶民の怒り』を演出しよう」


野党議員C

「今の時代、大衆を動かすのは『真実』じゃない。『感情』だ。印象操作こそが勝負の分かれ目だ」


◆マスコミの反対勢力の会話

某テレビ局報道部・編集会議室


記者A

「視聴率が落ちてる。減税されたら『庶民の苦しみ』ってネタが使えなくなるじゃないか」


記者B

「新聞の購読数も激減してるし、若者はもうネットしか見ない。広告費もSNSに流れてスポンサーは逃げる一方だ」


記者C

「だからこそ今こそネガティブキャンペーン。『減税の裏に巨大な陰謀あり』って見出しで特集を組む。『日本経済は破綻寸前』って連載記事もいいだろう」


記者A

「『減税されても物価が下がらないのは政府の責任』って切り口でいくぞ。庶民の苛立ちを拾い集めろ」


記者B

「『政治と企業の癒着』ってストーリーも追加だ。『日本食チェーンの裏に潜む政官財トライアングル』って特集、いけると思うぞ」


記者C

「このままじゃ政府に手柄を取られる。報道の主導権はこっちに戻すぞ」


◆某国スパイ工作員の密談

アジア某国・秘密連絡拠点


スパイA

「我々の国では経済が停滞しているというのに、日本は減税と育児支援で出生率を上げ、食料自給率も改善している。経済も堅調に成長している」


スパイB

「正直、羨ましい。国民は豊かで満ち足りていて、我々の情報操作も通じなくなってきている」


スパイC

「『日本人は不満だらけ』の時代は終わったか。ネット上でも政府を称賛する投稿が多い」


スパイA

「日本を内部から崩すのは難しい。あの総理、手強すぎる」


スパイB

「だが諦めるな。次は金融システムを狙う。通貨市場を揺らし、日本の輸出優位性を崩す。あの成長に嫉妬している国々は協力してくれる」


スパイC

「潰せないなら、遅らせる。それが鉄則だ。日本の未来を遅らせるための策を練るぞ」


◆宗教団体の暗躍


都内某所、地下にひっそりと構えられた礼拝堂。鈍い光を放つシャンデリアの下、空気は異様な静けさに満ちていた。壁面には奇怪な紋様が描かれ、祭壇の奥には重厚なカーテン。その奥で、一人の男が白衣をまとい、静かに座していた。顔を覆う銀の仮面が、表情を完全に隠している。


教祖

「日本の政治は、我々の意図とは違う方向へ進んでいるな」


低く抑えた声には、確かな威圧が宿っていた。幹部Aが一歩前へ進む。


幹部A

「はい。安原総理による減税政策の成功により、国民の不満は急速に消えつつあります。政府への信頼が戻り、『救い』を求める者が減少しています」


幹部Bも続く。


幹部B

「経済が安定すれば、寄付金も減少します。信者が『未来に不安を抱かなくなる』ことこそが、我々にとって最大の脅威です」


教祖は黙ったまま指を組み替え、しばし沈思した後、低く呟いた。


教祖

「ならば、総理を消すしかあるまい。救世の道を阻む者には、神の裁きを」


幹部Aの表情は誇らしげだった。


幹部A

「すでに準備は整っております。総理の公務日程と移動ルートは、内部協力者を通じて掌握済みです。来週の地方視察中に、実行可能です」


幹部Bが慎重な声で進言する。


幹部B

「ただし、国際警察組織が我々の動きを察知した可能性があります。一部計画が流出した恐れがあります」


教祖は喉の奥で笑った。


教祖

「フフフ、国際警察か。魔法を使おうがAIを使おうが、人の心の奥底にある『信仰』までは読めまい。『信仰』とは、最も深く、最も強い人間の動力。我らの網は、政界・経済界・教育界にまで張り巡らされている。そう簡単には潰せんよ」


幹部A

「承知しております。総理には、逃げ場はありません」


教祖はゆっくりと立ち上がり、祭壇へと歩を進めた。


教祖

「神は試練を与えられる。我々が再び『救世』の名の下に君臨するためには、邪魔者を排すべきだ。準備を進めよ。『光』は、我らのもとにあらんことを」


幹部たちは一斉に頭を垂れた。


礼拝堂に響いたのは、祈りとも呪詛ともつかぬ低い唱和と、祭壇奥で静かに鳴り始めた鐘の音だった。

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