幕間 推しの会
崖の上の砦に上り、数人の男が肩を組んで歌いながら飲んでいる。
落ちはしないかと見上げる双蛾の袖を、繭が引いた。
「あんなのほっといて、座って座って!」
崖が気になりつつも双蛾が座ると、たちまち女たちが群がる。
「ねぇ、コレ食べて」「コレも!」「こっちの肉も」
次々と皿が差し出され、双蛾の前に食べ物の山ができる。
「ありがとう」
双蛾は微笑み、一皿目を手にした。
「うん、おいしい」
にこやかに肉を頬張る。歓声が上がる。
二皿目、「わぁ、軟らかくて甘くておいしい」
三皿目、「魚もおいしい」
妙な盛り上がりを見せる中、焔と不知火の間に、繭が無理矢理割り込んで座った。
「なんだよ、狭いな」
焔が文句を言うが、繭は気にせずその肩に手を置き、うっとりと目を輝かせる。
「見て…あたしが持ってった肉団子食べてる…尊い…!」
「食ってるだけじゃねぇか」
ため息をつく焔。
不知火が不思議そうに言った。
「なぁ、前から疑問だったんだが、その団扇は何なんだ?もう秋だぞ」
繭の手には、派手な柄の自作の団扇が握られている。表に不知火、裏に双蛾の文字が眩しい。
「よくぞ聞いてくれたわ。これはね…」
熱心に説明を始める繭に呆れ、焔は盃を持って席を移動する。
途中、なぜか老爺の行列が出来ているのに気付く。
銀狐の祖父が先頭にいた。
「…何、並んでんだ?」
「双蛾ちゃんに差し入れたくて、食事が終わるのを待っとる」
見れば、プルプルと震える手に、羊羹の皿が大事そうに乗っている。後ろに並ぶ老爺たちも、それぞれに饅頭や果物の皿を持つ。
「えぇい、早く手渡したい!甘味堂の新作なんじゃ…!」
焔は双蛾を見た。
まだまだ食事の皿が山積みだ。
女たちに囲まれ、うまそうに食べ続ける双蛾。
「…出直したほうが、いいんじゃねぇか?あれ、当分終わらねぇぞ」
途法に暮れ、焔は呟いた。




