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天元戦記  作者: yakiniku1010
第2章
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幕間 星占

嶺洲れいしゅう城内の一室で、星占ほしうらは、ぼんやりと窓辺に座っていた。

山脈の向こうに、夕日が沈んでいく。長すぎる一日が、終わろうとしている。

初めて目の当たりにした、戦場。

たくさんの人の死。

焼け落ちる街――。

見えた未来の通りだった。

だが、初めて、二つの未来が同時に見えた。

街が死ぬ未来と、街も人も死ぬ未来。

閻魔えんまが、守るために捨てることを選び、最悪の結末は回避された。

自分は、その背中を押せたのだろうか。

閻魔を待ち受ける運命は、何か変わったのだろうか。

戸を叩く音がした。

「どうぞ」

扉が開く。閻魔だった。

星占の向かいに腰を下ろし、窓へ目を向ける。

「疲れたろう」

星占は俯いた。

「そなたに助けられた。

――本当に未来が見えていたのだな」

「えっ」

驚いて顔を上げる。

「信じてなかったんですか?」

心外だった。

閻魔が破顔する。

「いや、そんなことはない。だが、ここまでとは…」

しばしの沈黙が続いた。

空が暗くなっていく。

「…わしの破滅の未来も、これで変わったのか?」

「……わかりません」

それは本当だった。

あのとき見えた遠い未来は、目を凝らしても、今は見えない。

閻魔は頷いた。

「わしは明日、天元てんげんへ向け発つ」

「私も一緒に…」

言いかけた星占を、閻魔は軽く手を挙げて制した。

星占はまた俯く。

「……足手纏あしでまとい、ですよね。ウマにも乗れないし…」

「そうではない」

閻魔は優しく微笑んだ。

「そなたが双蛾そうがと現れたとき、心臓が止まるかと思った。

前線に出ていたと知り、一歩間違えば、命が危なかったではないか、と…」

手を組み替え、静かに言った。

「そなたを、失いたくない」

沈む前の最後の夕日が、閻魔のほほを照らしている。

「ここで、待っていてほしい。必ず迎えに来る」

挿絵(By みてみん)

星占は閻魔を見つめた。

目を凝らす。

無事また会える未来を、今すぐ見たかった。

だが、こんなときに限って、何も見えない。

――見えない未来は、信じるしかない。

星占は、迷いを断ち切るように、微笑んだ。

「ご武運を」

閻魔は頷き、立ち上がった。

扉が開き、静寂が訪れる。

日が落ち、部屋が暗くなる。

星占は目を閉じ、見えぬ未来に祈りを捧げた。



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