幕間 双蛾の強さ?
界門の砦は、組み上げては崩れ、また組み上げて――を繰り返し、徐々に大きくなる。
双蛾のたっての希望で、書庫は早めに整備された。紅蓮がどこかで買い漁ってくる書物や、嶺洲から寄贈された古書が、手製の棚に収められていく。
ある日双蛾が書庫へ向かうと、いつになく中が騒がしかった。
文机の周りに人だかりが出来ている。
「書庫では静かに」
言いながら通り過ぎようとすると、焔に腕を掴まれた。
「双蛾、いいところに来た。助けてくれ!」
「…何?」
「腕相撲だ!」
――腕相撲?
見れば、文机の前に弁慶がドカリと座り、不敵な顔でこちらを見ている。足元に数人の男たちが転がっていた。
銀狐と黒鉄が駆け寄ってきた。
「このままじゃ俺達全敗だ」
「こんな時に限って、不知火もいねぇしよぉ〜」
「頼む!お前なら勝てる!」
双蛾が眉をしかめる。
「やだ。腕力でかなうわけないでしょ。そもそも、ここで腕相撲大会なんかやらないでよ」
立ち去ろうとするが、強引に押し戻され、弁慶の対面に座らされてしまう。
「フハハハ!双蛾よ!近頃手合わせでは負け続きだが、雪辱を果たす時が来たな!」
弁慶が目をギラギラさせ、右腕を突きだした。
仕方なく双蛾も腕を出す。
(…さっさと負けて終わらせよう)
手を組み交わす。弁慶と比べると、双蛾の手はまるで子供だ。
「用意…」
焔の声に、一同が静まる。
「始め!」
「ふんぬ!!」
弁慶が本気で腕を振り下ろした。
双蛾は体ごと吹き飛んだ。
書棚に激突。手製の棚は物凄い音を立てて崩れ、双蛾は書物の山に埋もれた。
「うわぁぁ!」「双蛾、大丈夫か!」
一同が駆け寄り、助け起こす。
「…もう、だからいやだったのに」
双蛾はため息をつき、体の埃を払った。
「…大丈夫なのか」「…頑丈だな…」
唖然とする面々。
散らばった本の中に、双蛾は目当ての一冊を見つけ、拾い上げた。
「棚、直しておいてよね」
ピシャリと言い、書庫を後にする。
「双蛾!また勝負しようなぁ!」
背後から弁慶の声が響いた。
(…絶対やらない)
双蛾は再びため息をつき、立ち去った。
――城の完成の、少し前のお話。




