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05話

 

 荷受時間まで暇だったので、選別作業に加わる。

 大きくわけて、四つある。


 大小の有無に関わらず、乾電池と呼ばれるもの。

 乾電池の中でも、リチウム電池の再充電できるもの。

 それに、水銀電池。ボタン電池と呼ばれるもの。


 後はそれ以外の、海外製やゴミ、判別不可能な潰れたもの。


 パートに混じり選別を始める。

 ベルトコンベアを両側から手作業で分けていく。


 何度か、見覚えのある乾電池を手にしたが、無視した。


 自分が機械だ。

 ただ、見て探して選別するだけの機械。


 呪言のように繰り返し、手を動かす。

 それでもときどき、手にした乾電池の中に映像があると思うと、吐き気がしてきた。


 荷受の時間が来て、荷物を受け取った後は、人員も増えてすることが無くなった。

 昼過ぎまで、現場の掃除をしていると、倉庫の前で足が止まった。


 分別された、フレコンバッグ。

 マジックで、廃棄と書かれている。

 一袋で、1トン弱。

 約五万五千本の乾電池が詰まっている。


「これが全部乾電池か……」


 そう思うと、昨夜のことが脳裏が過ぎりゾクッとした。

 倉庫に置かれ、時期が来れば資源としてリサイクされる。


 別のフレコンバッグには、資源と書かれている。

 リチウムイオン電池だ。

 レアメタルを取るために、別の処理方法で生まれ変わる。


 乾電池は、「使い切り」。

 リチウムイオン電池は、「何度も記憶——充電を上書きしながら生きる」。


 同じ電池なのに、これほど違うとは。

 今までこんなに深く考え事など一度もなかった。

 昨夜のことがなければ、僕は知らないままだった。


 ただの廃棄物が、人の人生の断片だったら……。


 また吐き気がして、深く息を吸い込んだ。


 調べてみないと。

 乾電池に記憶―—映像が残るようなことがあるのか。

 あの映像は、僕の妄想で、どこかで見た記憶が再生されただけなのか。

 だが、もし本物だったら……。

 小さな背中が、ベランダに駆けていく光景を思い出す。


 僕は知らないうちに拳を握りしめていた。


 事務所に戻り、早退することにした。

 あることを調べるためだ。


「わかった。本社に呼ばれてるなら仕方ない」

「すみません、課長」

「なにを謝っているんだ。そうだ、本部長によろしく伝えといてくれ」


 僕は、頭を下げて事務所をあとにした。

 事務所のテレビは見なかった。

 気にしてしまえば、何かが見えそうだったから。


 廊下歩く。

 本社の部長は、僕の父だ。

 年に一度か二度。

 こうやって、会社を抜け出すことがある。

 本当に呼ばれることもあるが、基本は僕のでまかせ。


 工場勤務の人たちは、余程のことがない限り、本社と連絡は取らない。

 六年勤めて、本社からの連絡など数えるくらいだった。


 後ろ髪を引かれる思いも、会社を出た頃にはすっかり忘れていた。


 ポケットには、廃棄される前の乾電池が二本。

 冷たい金属が、歩幅に合わせて揺れていた。


 科学的にありえるのか。

 それとも、たたの都市伝説で終わるのか。


 電車に乗り込むと、母校の大学へと向かった。


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