27話
麻衣が落ち着くのを待ってから、スマホを調べた。
期待はあっさり裏切られた。
「こんなアプリ入れた覚えない」
悲鳴に近い声で麻衣が訴えた。
僕はそのアプリを、ネットで調べた。
「これ……位置情報、送るやつだ」
「私の位置が、バレてたってこと?」
言葉が出なかった。代わりに、わずかにうなずいた。
それでまた、麻衣の肩が落ちた。
「辛いと思うけど、警察に行って説明しよう。僕も一緒に行くから」
「……うん。わかった」
画面の映像は録画した。
これが証拠になるかは分からないけど、無いよりはいいだろう。
撮影したのは、彼女のスマホってことにすればいい。
データを彼女のスマホに移し終わってから、ふとあること思い出した。
「ねえ、ちょっといい?」
ショックを受けている彼女に聞きづらいことだったが、確認したかった。
「麻衣が、僕を疑った映像って、どんな映像だった?」
麻衣は顔を少し上げると、思い出すように口を開いた。
行方不明の親子が居なくなった家からの映像、というのは知っている。
だが、実際どんな映像か聞いてみたかった。
「たしか……いつも帰ってる道を映していて、私が画面の手前から」
「手前から?」
麻衣は何かに気づいたかのように、目を細める。
「あの時、私びっくりして。よく見ないで自分だって思ったの。だって、夏彦のテレビだったから、てっきり私が映ってると思って」
「う、うん。普通、そう思うよね……」
違うと分かっていても、居心地が悪い。
「でも、よく考えたら。反対なんだよね」
「反対?」
「映ってた道を使うのって、帰りにしか使わないの。行きはコンビニに寄ったりするから。だから、私が手前から来たらおかしいよね? 帰りだから、画面の奥から私が来ないといけないのに」
嘘だろう。
謎が増えるなんて。
麻衣だけが映っていると思っていた。
でも、違う。
一つ解けて、また一つ増える。
終わりが見えない。
思わず深いため息がもれた。
それなのに、乾電池はもう手元にない。
「あれって……」
「なにか思い出した?」
もう嫌な予感しかしない。
「うん。今、思い出した」
「な、なに?」
麻衣はちょっと考えてから、「映像とは違う話だけど」と前置きをして、
「喧嘩した時、夏彦が追いかけてくれたじゃない? そのときに、すれ違った中年の男の人がいたの」
「そう、だっけ?」
正直、覚えていない。
あの時は、通り魔のことで頭がいっぱいで。
「用務員さんって、登下校、スーツを着てるんだよ」
「……マジか」
線は、もう繋がっていた。
教師のスマホにGPSを仕掛けて、跡を追う。
そして、犯行に及ぶ。
僕はテレビ台の名刺を掴み、震える指で番号を打った。
呼び出し音が、やけに長く感じた。




