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7-9 【重大な欠陥】シャワーを浴びてきなさい

7-9 【重大な欠陥】シャワーを浴びてきなさい


クローディア(マリ)は、脱ぎ捨てた装甲パーツの後片付けを全て遥に任せ、上から下まで汗まみれになった不快な身体のまま、管制室のゆりのデスクへとずんずんと近づいていった。


「――ゆり、極めて重大な欠陥(案件)が発覚した。これは製品化する上で、絶対に避けて通れない問題だよ」マリはいつになく真剣な、世界の危機に直面したかのような神妙な面持ちで語りかけてきた。


ゆりは、彼女の先ほどの試験場での動きと、現在の見るも無惨な汗だくの惨状を特等席で観察していたので、優秀な共同開発者として、彼女が今ここで何を指摘したいのかは完全に分かっていた。分かってはいたのだが、それよりも先に、一人のまともな女性として言わずにはいられない言葉が口を突いて出た。


「マリ、話しは後よ。――さきにシャワーを浴びてきなさい。……なんだか、少し匂うわよ」ゆりは鼻にそっと手を添えながら、マリに向けて事務的にシャワー室の方向をビシッと指差すのであった。


「あ、やっぱり? 自分でも気持ち悪いと思っていたんだ。じゃあ、さっと浴びてくるよ」マリは素直に頷くと、なんと脱衣所へ移動することすら面倒くさがって、ゆりの目の前でカーボンファイバースーツのジッパーを一気に引き下げた。


そのまま全ての衣服をその場に脱ぎ捨て、一切の躊躇もなく、文字通りの「素っ裸」の姿になってシャワー室へと堂々と歩いていくのであった。その一切の羞恥心をどこかへ置き忘れてきた後ろ姿を見送りながら、ゆりは深い溜息と共に心の中で呟かざるを得なかった。(……神様も残酷よね。容姿も抜群に整っているし、スタイルだって同じ女性の私が本気で羨むほど素晴らしいのに……どうして中身がここまで致命的に『残念な子』なのかしら)ゆりもマリのこの手の突飛な奇行(野生児っぷり)には長年の付き合いで嫌というほど慣れきっていたため、いまさら「ちょっと! ここじゃなくて脱衣所で脱ぎなさいよ!」と大声を上げて怒る気力すら湧かなかったのである。


ゆりは椅子から立ち上がると、マリが床に乱暴に脱ぎ捨てていった、じっとりと汗を吸い込んで重くなったスーツ一式を渋々拾い上げた。それを備え付けのランドリーバスケット(籠)へと放り込み、近くで装甲のメンテナンスを終えた遥へと手渡す。


「遥、本当に申し訳ないのだけれど……。これ、裏の洗浄機にかけておいてくれるかしら」


「はい、ゆり。分かりました」遥はゆりから籠を両手で丁寧に受け取ると、いつもの一糸乱れぬ足取りで研究室の奥にある専用の洗浄機へと持っていくのであった。それからしばらくして、シャワー室のドアが開き、温かい湯気と共にマリが戻ってきた。


――やはり、最初から最後まで期待を裏切らないのがクローディア・マリ・天野であった。


彼女はバスタオルを巻くことすらしておらず、髪から水滴を滴らせた完全な「素っ裸」の生まれたての姿のまま、平然とした顔でゆりのデスクの前まで戻ってきたのである。それを見たゆりも、流石に限界を迎えて叫ばざるを得なかった。


「マリ!! 服くらい着なさい!!」一体どこの幼稚園児よこの子は、と、額を手で押さえて心底呆れ果てるゆりであった。

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