6-16 激変する試験場(呪いの館からアスレチックへ)
6-16 激変する試験場(呪いの館からアスレチックへ)
「なるほど。ゆり、おっしゃる通りです。そういう意図であれば、すぐに元へ戻しますね」遙が素直に応じると、256人の身体が再び眩い光に包まれた。
光の霧が晴れたとき、そこには先ほどの武骨にしてスタイリッシュな廉価版プロテクター――特撮ヒーローを彷彿とさせる純白の装甲へと、一瞬にして戻った彼女たちがいた。
それを見届けたクローディアは、即座にプロの気鋭の研究者としての顔に戻り、ゆりへと視線を送った。「ゆり、遙たちが『シラユキ』を強制顕現させたことで、ベースとなる廉価版の構造データに歪みやエラーが発生していないか確認しよう。着用させる前と変わりがないか、徹底的なチェックだ」二人は整列している遙たちの中から一人の個体を近くへ呼び寄せ、その装備の健全性を入念にスキャンしていく。
ゆりが手元の端末に表示される数値を鋭く読み取った。「特に顕現前後で装甲の分子結合に変調は見られないわ。これなら、このまま実戦評価試験に移行できると思う」
「よし、こちらも問題なし。じゃあ、始めようか!」クローディアの軽快な合図とともに、評価試験が正式にスタートした。
オリジナルを含めた、総勢256人の遙たちは、広大な試験場へと一斉に移動を開始する。試験の内容自体は、先ほどの試作機テストと同様だ。
弾丸による耐衝撃試験、槍による刺突試験、そして油圧ハンマーによる衝撃緩和試験。
ただ、今回は「256人」という膨大な個体を同時に稼働させる。これまでの10人程度をローテーションさせていた狭い屋内試験場では、明らかにキャパシティが足りなかった。
今までは、試験体が過酷なテストでミンチに潰れては回収し、再生プールで肉体を再構成するまでの「再生サイクル(ダウンタイム)」を計算しなければならなかった。ゆえに、連続で試験体を壊せないという開発上のジレンマが常に付きまとっていたのだ。
しかし、今日の試験場は、かつてない活気と熱量に満ちあふれていた。一度に試験を受けられる人数には物理的な限りがある。
そのため、順番待ちとなり、試験からあぶれた無数の遙たちは、試験場の広大な空きスペースで各々好き勝手に、実に自由に動き回っていたのである。外周のトラックをひたすら猛スピードでランニングするもの。
数名で楽しそうに集まって、格闘戦(乱取り)のステップを踏み合うもの。前転、側転、空中回転にバク転と、プロテクターの可動域を試すようにアクロバティックな動きを連発するもの。刀身が空気を切り裂く鋭い風切り音を響かせ、ひたすら剣の素振りを繰り返すもの。
はては、楽しげにステップを踏んで踊りだす個体や、柔らかな芝生の上にゴロゴロと寝転がって、気持ちよさそうに昼寝をしているようにしか見えない個体までいた。
これは事前にクローディアが遙たちに向けて、「全員一度には試験できないから、残りの子はデータ取りのために適当に身体を動かしてみておくれ」と、フランクに指示を出していたからだった。
かつて、心を持たない人形たちが次々と凄惨な肉塊にされて転がっていた、あの冷徹で呪われた試験場。そこは今や、256人の少女たちが活き活きと生命の輝きを謳歌する、賑やかで温かなアスレチック場へと、鮮やかに激変を遂げていたのだった。




