6-6 引き算の理論(組織的運用のモジュール化)
6-6 引き算の理論(組織的運用のモジュール化)
クローディアの根底にある設計思想――それは徹底した組織としての「合理性」であった。人間は、たった一人で戦争を戦うのではない。軍隊という組織は、複数の人間がそれぞれ明確な役割を持ち、集団として機能するものである。
したがって、あらゆる万能な機能を兵士一人のスーツに無理に詰め込む必要はないのだ。そのために設けた、全身の拡張ハードポイント。
前衛、あるいは後衛といった兵士の役割に応じて、後から装備を個々に組み替え、戦況に最適化していけばいい。それこそが、彼女が導き出した「引き算の理論」であった。
全員が同じ高価で万能な装備を纏う必要はない。これは、製造コストの面でも極めて大きな優位性を持つ。
ベースとなる白いプロテクターは全員共通の量産型にし、役割ごとに外付けパーツをドッキングさせれば事足りる。
指揮官のスーツには、通信と索敵を強化するヘッドユニットを。
最前線を駆ける前衛には、強力な近接武器と強固な追加装甲を。
後方から支援する狙撃兵には、高速移動と位置取りのためのスラスターを。――つまり、遙の『シラユキ』が「たった一つで完璧に賄えていた神の機能」を、生身の人間のためにバラバラに分解し、モジュール化したと言えば分かりやすかった。
そしてこれこそが、クローディアが先ほどから「つまらない」と毒づいていた最大の原因に他ならなかった。
彼女の天才的な美学から言わせれば、こんなごてごてとパーツを付け足していくパッチワークのようなメカは、お世辞にも「美しくない」のである。
それでも、全身のハードポイント拡張構想に加え、将来の重装甲案である『アカサギ』まで一気に作り込んでいるあたり、クローディアもこの仕様書を見つめながら、冷徹な現実を思い知っていたのだろう。
(これだけの拡張性とマージンを持たせておかなければ、生身の人間などアノマリーの前に一瞬で喰い殺される)彼女の脳裏には、実戦の冷酷な恐怖がありありと想定されていたのだ。
「よし、基本設計はこれで承認だね。あとは、実際に工作機械で試作してみて、理論通りの耐久度やスペックで動くのかどうかを確かめる実験段階に入るよ」二人は一息つくと、次なる実証テストに向けて、ラボのメインジェネレーターの出力を静かに引き上げるのだった。




