6-5 不本意なスケールダウン
6-5 不本意なスケールダウン
そんなとんでもない事案が、自分のすぐ背後で密かに実行されているとは夢にも知らず。
二人の天才科学者は、劣化版の仕様作成という「不本意な作業」にただ没頭していた。
「つまらない! 実につまらない作業だよ、これは! なんだって言うんだ、わざわざ完璧に備わっている美しい機能を一つずつ外していくなんて! 何という愚かなことを私はしているんだ!」キーボードの前に突っ伏し、自らの頭をバリバリと掻きむしって大声でぼやくクローディア。
ゆりは手元の画面を見つめたまま、呆れた声で彼女をたしなめる。
「はいはい、お静かに。そもそも『スケールダウンして偽物を提出しよう』と言い出したのは、マリー、あなたでしょう? どのみち、遙のシラユキの全スペックを外に出すわけにはいかないんだから。代わりの代替品をでっち上げないと、私たちが怪しまれるわよ」
「いや、ゆり。文句を言いつつも、もう出来たよ。これがそれ(劣化版)の設計データさ!」クローディアは不敵に笑うと、完成した3Dモデルデータをゆりの端末へと転送した。
ゆりの画面に表示されたのは、白い装甲を纏った人間の姿であった。遙の『シラユキ』が宿していた、あの戦乙女を思わせる神秘的で流麗な輪郭はそこにはない。
どちらかと言えば、現代の最新テクノロジーによって構築された、武骨な「タクティカル・プロテクター」へと先祖返りしたような外観だった。
だが、初期の実験体用装甲に比べればデザインは遥かに洗練されており、どこか特撮ヒーローを彷彿とさせるスタイリッシュな形状にまとまっている。全身のカラーリングが純白なのは、本物の『シラユキ』の設計の名残だろう。
そして最大の特徴として、装甲の各部にはガチガチと無数に『ハードポイント(外部アタッチメント用の接続穴)』が設けられた設計案が採用されていた。
これはクローディアが初期に考案していた「ブレードアーマー(仮)」の拡張構想を引き継いだものらしい。その接続穴は両手、両腕、両肩、両脚、両腰、追加で両足、両胸、両肩甲骨、そして背中に至るまで、全身のあらゆる部位にこれでもかと網羅されていた。
両手(手の甲):主に近接武器用の小型マウントを取り付け、拳の延長線上で攻撃を繰り出す構想。
両腕:中型の近接武器をここにガチリと固定し、腕を振るだけで敵を切り裂くスタイルを想定。
両肩:初期状態での武装はなし。主に大型の遠距離用重武装を外付けするためのマウント。
両脚:移動用の追加推進機の取り付け、または予備のミサイルポッドを増設する構想。
両腰:主に予備武器のホルダー。短刀や拳銃などをマウントするスペース。
両足:移動用追加装備のプラットフォーム。重装甲型『アカサギ』の高速走行用ローラーユニットはここに接続される。
両胸・両肩甲骨:主に追加の防御装甲を取り付ける場所。重装甲型『アカサギ』の追加胸部プレートはここにドッキングする。
背中:多目的拡張スロット。任務の内容によって、飛行用ユニット、長距離レーダー、大容量バッテリーなど、バックパックを柔軟に換装してあらゆる戦況に対応する構想。




