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6-4 データ常時同期ネットワークの構築

6-4 データ常時同期ネットワークの構築


調整槽群の前に佇みながら、遙は冷徹に、かつ確実に自らの論理を組み立てていく。


(この調整槽の中にいる無数の私もまた『私(遙)』なのだとすれば。私の得た記憶や経験は、そのすべてを全員で共有するべき性質のものである。


そうすれば、たとえ今活動しているこの個体の肉体が戦闘で滅ぼされようとも、ここには私の身体が無数に予備として存在している。


遙という存在そのものが世界から消え去るわけではない。この硝子の向こうにいるすべての私たちが――『遙』なのだ)高度な演算の果てに、遙が導き出した答えはこれだった。

結論を得た彼女は、一切の躊躇(ちゅうちょ)もなく行動へと移る。


スウ、と遙の瞳の虹彩が、神秘的な『虹色』の輝きを放ち始めた。彼女は纏っているインナースーツの無線ナノリンクを介して、調整槽の中で眠る無数の試験体たちの脳(ニューラルネットワーク)へと、外部から直接ハッキングを仕掛け、接続を試みる。

挿絵(By みてみん)

元より全く同じ遺伝情報(DNA)を持つ個体同士だ。アクセスを遮るセーフティなど、初めから存在し得なかった。接続(リンク)は、一瞬にして確立された。

繋がってしまえば、あとはただ、データの濁流を流し込むだけである。


『すべての記憶・経験・感情・戦闘ログの転送、および複写。――成功』

『以降、活動個体から待機個体へのデータ常時同期ネットワークを構築。――成功』


――この瞬間、調整槽の中で冷たく眠っていた無数の人形たちは、ただの肉塊から、そのすべてが『遙』という一つの生命へと変貌を遂げた。


現世で活動するオリジナル個体から、リアルタイムで全データを同期された試験体たち。


彼女たちは青い培養液の中で眠りながらにして、かつて遙が会得した「流体力学、マグレブ、プラズマ推進、捕食消滅」という、人類の常識を遥かに超越した超科学スペックを脳内で完全共有し、そのシステムを爆発的に進化させていく。


硝子の向こうで眠る無数の少女たちは、その精神の最深部において、完全に一枚の岩の如き強固さで結ばれた、巨大な『遙』となったのである。

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