5-6 白衣と温かいコーヒー
5-6 白衣と温かいコーヒー
ハッと、ゆりは目を覚ました。
どうやら研究室のコントロール端末の前で、過去のデータを整理しているうちに、そのまま眠りに落ちてしまっていたようだった。
ふと気づけば、自分の肩にはいつの間にか、クローディアが着ていた白衣の上着が優しく掛けられている。ゆりは凝り固まった身体をほぐすように、椅子から立ち上がって大きく伸びをした。
随分と昔の、あのクローディア――マリーと最初に出会った頃の夢を見ていた気がする。
あの怪しげな勧誘メールを受け取った当時のことを思えば、自分たちは随分と遠いところまで歩んできた。そんな感慨深い物思いに耽っていたゆりの背後から、聞き慣れた明るい声が掛けられた。
「やぁ、ゆり。起きたのかい? 随分と疲れていたみたいだね。どうだい、淹れたての温かいコーヒーでも飲むかい?」振り返ると、クローディアが湯気の立ち上るマグカップを差し出していた。
そのすぐ横では、インナースーツ姿の遙が、クローディアの一挙一動――コーヒーの淹れ方や、カップの持ち方に至るまでを、じっと鋭い目で見つめている。
「ええ、頂くわ」ゆりはクローディアから温かいカップを受け取り、一口すすった。
すると今度は、遙の鋭い視線がゆりへと向けられる。
ゆりがコーヒーを飲む姿、カップを口元へと運ぶその一挙一動を、彼女は瞬きさえ忘れたかのように凝視し始めた。人間らしい仕草を必死に学ぼうと、二人の一挙手一投足を食い入るように見つめてくる遙。
そのどこか健気で愛らしい姿に、クローディアとゆりは自然と顔を見合わせ、クスッと静かに笑い合うのだった。




