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凄惨極まる捕食と阿鼻叫喚の惨劇が繰り広げられるデパートから、途切れ途切れの通報が寄せられてから数十分後。現場の周辺には、けたたましいサイレンを鳴り響かせた警察のパトカーが何台も急行し、タイヤを激しく軋ませて次々と到着した。
「犯人は複数。次々と一般市民を殺害して回っている、凶悪な無差別テロリストの可能性がある」そんな極めて曖昧で的外れな無線指令の元、緊急出動を余儀なくされた警官たちがパトカーのドアを蹴破るようにして飛び出し、デパートから逃げ出してきた人々へ必死に事情聴取を始める。
しかし、通報した人間は極限の恐慌状態に陥っており、110番を受けた指令室のオペレーターも正確な状況を何一つ掴めていなかった。何より、通話の途中で回線が強制的に切断されており、その後いくらコールを鳴らし直しても、地下の防災センターへ再び繋がることはなかったのだ。
ただ、受話器越しに響いた凄まじい悲鳴と緊迫感から、ただ事ではないと判断した警察上層部が、付近の全警察車両へ大至急の臨場を要請した結果がこれだった。犯人は複数犯所持している凶器は不明次々と館内の人間を殺害している現場は大型デパート共有された情報はこれだけだった。
デパートの周囲はすでに、我先にと逃げ惑う血の気の引いた生存者たちと、「一体何事だ」と野次馬の黒山の人だかりによって、完全に収拾がつかない混沌と化していた。
「おい、そこをどけ! 警察の突入動線を確保しろ!」現場の警官たちは、これ以上外で問答を続けていても埒が明かないと判断。即座に拳銃のホルダーに手をかけ、デパートの正面ガラス扉から内部へ一斉突入を試みようとした――まさに、その瞬間だった。
パリィィィィィン――ッ!!!頭上遥か、ビルの上層階から、巨大な窓ガラスが爆破されたかのような猛烈な破砕音が響き渡った。見上げた人々の網膜に映ったのは、砕け散るガラスの破片を太陽の光に反射させながら、上空から弾丸のように高速で落下してくる『漆黒の巨大な質量』だった。
ドガァァァァァン――ッ!!!激しい衝撃音と共に、その黒い怪物は、デパートの入り口付近に密集していた野次馬根性丸出しの群衆のド真ん中へと直撃した。
しかし、悪夢はそれだけでは終わらなかった。間髪入れずに、次々と上層階のガラスが割れる狂ったような音が連鎖し、二体、三体と、巨大な黒い肉塊が文字通り「空から降ってきた」のだ。
落下してきたアノマリーたちは次々と生身の人間を下敷きにして圧殺し、今まさに盾を構えて突入しようとしていた警官隊をも容赦なく巻き込み、その肉体を大理石の地面へと叩き潰した。
大気中に爆発的な土煙と硝煙が立ち込め、周囲の視界が最悪な形で遮られる。何が起きたのか分からず、混乱の中で必死に目を凝らそうとする警官たち。少し離れた安全圏から見ていた見物人たちは、煙の向こうに、自分たちの想像力を遥かに絶する凄惨な光景が広がっていることを、本能的な恐怖と共に予感していた。
――状況は、ここからさらに最悪の、人類の科学では制御不能な方向へと突き進む。立ち上る土煙の奥から、無傷でむくりと立ち上がる五体のアノマリー。
奴らの歪な輪郭の眼前に広がっていたのは、狭い空間に密集し、逃げ惑う無防備な「ご馳走の山」であった。数千、数万の人間が密集する、地上の檻。
アノマリーからすれば、眼前の生命をただ貪欲に融解し、捕食しない理由など、そこには何一つ存在しなかったのである。




