4-12 等価データ化と格納技術
4-12 等価データ化と格納技術
装甲が衣服の着脱プロセスを完全に無視し、文字通り一瞬で掻き消えた光景を目撃して、二人は思わず声を漏らした。「おお!」「あ……」歓声をあげたのは、もちろんクローディアだ。新しい最高のおもちゃを見つけた子供さながらに目を輝かせている。
「ふふふ、面白いなあ! 遥、それ、もう一度出して消してを見せておくれよ!」クローディアは遥の肩に両手を置いて身を乗り出し、無邪気にせがんだ。
一方、呆れた声を漏らしたのはゆりだった。
(またやらかしたわね、この子は……。どこまでいっても、本当に底の知れない『びっくり箱』だわ、遥は)心の中でそう毒づきながら、クローディアが遥に詰め寄って無茶振りをしている光景に、強い既視感を覚える。
クローディアに頼まれた遥が、至極真面目な顔でシラユキを出したり消したりしているのを横目に、ゆりは「さて、仕事をしましょう」とばかりに大容量サーバーの端末操作を再開した。
結局、クローディアは遥に命じて、シラユキを体内に格納させるのではなく、床に「置いておいて」もらうことにした。
シラユキは、先ほどの実験初期と同じように、前後に真っ二つに美しく割れた状態で床に転がっている。手で持っても凹凸がなく、磁力等でもくっつかない、あの「物理法則を拒絶した状態」のままだ。
クローディアは後で、この物質の結合メカニズムを徹底的に調べるつもりのようだった。
「少しは落ち着いたかしら?」ゆりは、満足そうなほくほく顔で戻ってきたクローディアに、淹れたてのコーヒーを差し出しながら話しかけた。
「いやあ、ゆり。これは面白すぎるよ! もしこの技術を完全に実用化できたらさ……今までの世界の軍事常識を、根本からすべて破壊できるね」それは、紛れもない事実だった。
この物質の『等価データ化と格納技術』があれば、どれほど厳重な国家レベルの警備システムであろうとも容易にすり抜けることができる。超強力な重火器類を身一つでどこへでも忍ばせ、いかなる場所でも暴れ放題にできてしまうのだ。
それこそ、遥のような人造人間の体内に格納しなくとも、適当な『依り代』――例えば、普段使用しているパソコンや鞄、極端に言えば日常品のボールペン一本文の容積にでも、この兵器のナノマシンデータを仕込んでおけばいい。要人暗殺などいとも簡単に、そして確実に行えてしまう。
あまりにも恐ろしく、絶対的なテクノロジーだった。




