4-11 飛装『ブレード』の命名
4-11 飛装『ブレード』の命名
ゆりに問われた遥は、静かに首を横に振って答えた。
「いえ、ゆり。深層システムログを確認しましたが、これらに対する固有の名称は登録されていません」そう答える遥に、今度はクローディアが我が子を見るような楽しげな目を向けた。
「あの飛ばしているアレって、確か元々は私が初期の設計段階で、半分お遊びで組み込んだ武装だったよね?」
「はい、マリー。かつての『ブレードアーマー(仮)』の基本案に内蔵されていた、格納式の短剣がベースとして再構成されたものです」遥がそう答えると同時に、空間に静止していた14個のパーツが、見えない糸で引かれるように彼女の元へと吸い寄せられた。
各パーツは所定のハードポイントへと吸着し、ピタッと完璧な噛み合わせで再装着されていく。
「なるほど、ピンと来たよ。その飛ばしているアレは、今後『ブレード』と呼称する!」クローディアは遥にビシッと指を突き出し、堂々と宣言した。ゆりはそのあまりにも捻りのない直球すぎるネーミングに、呆れたような苦笑を浮かべて突っ込みを入れる。
「いや、それもう単純にそのまんまじゃない。開発者として本当にそれで良いの?」
「ははは、ゆり。こういうものはね、単純明快なのが一番なんだよ。イメージしやすいだろう? 昔の、あのごてごてした重装備のアイデアを思い出してごらんよ」クローディアは豪快に笑いながら答えた。
「まあ……開発責任者のあなたがそれで良いと言うなら、もう『ブレード』で登録するわよ」ゆりは小さく溜め息をつきながら、手元の端末を軽快に操作して正式な呼称データをシステムに保存した。
ゆりが端末を操作して実験の片付けに移ったことに気がついたクローディアは、遥に向き直って、今度は労うような優しいトーンで語りかけた。
「遥、そういうわけだから、今後はその飛ばしているパーツたちを『ブレード』と呼ぼう。それと、今日の実験は一旦ここまでにして終わろうか。流石に私も少し休憩がしたいかな」
「はい、マリー。今後はこれらの飛装を『ブレード』と呼称します。命名、ありがとうございます。それと、本日の戦闘実験は終了ですね。了解しました」遥がそう告げた瞬間、彼女の身体を包んでいた純白の『装甲シラユキ』が、まるで光に溶けるようにして一瞬で霧散した。




