4-8 造作もないこと(3連続撃破)
4-8 造作もないこと(3連続撃破)
すでに舞台は仕上がっていた。遥の頭上では、無数に浮遊するパーツが凄まじい速度で旋回を始めている。直撃すれば一瞬にして肉の塊と化すであろう、圧倒的な質量を持った鉄塊ハンマーが、遥の至近距離まで肉薄する。
しかし遥は、その致命的な質量をただ静かに目で捉えていた。それは、文字通り一瞬の出来事だった。無数に飛び交うパーツ群は、獲物の接近を本能で察知した飢えた獣のように、青白いプラズマの尾を引きながら一斉にハンマーへと襲いかかった。
――その刹那。そこにあったはずの巨大なハンマーは、網の目のような格子状に細切れにされ、激しい火花と共に虚空へと消滅した。
クローディアもゆりも、二回目の現象として予測した上で凝視していた。しかし、いざ改めて目の前で展開されると、「何故消えるのか」という純粋な疑問しか頭に浮かんでこなかった。
考えるだけ無駄と言わんばかりの超科学現象。
だが、ゆりは手を止めず、続けてハンマーを落下させる。今回は、間髪入れずに3連続で試験を行うことにした。
通常の被験体であれば、たった一度の激突でもミンチにされて終わる過酷な連続負荷試験。しかし、遥のシステムは「戦力の小出しなど無意味だ」と嘲笑うかのように、上空から次々と降り注ぐ鉄塊を、触れた瞬間にすべて細切れにして消滅させていった。
「もう驚きすぎて、一周回って呆れるしかないわね……」あまりにも異常な実験結果を前に、ゆりはどっと押し寄せた疲労を隠せない様子で呟く。
「いやあ! 改めて見ても最高に面白かった!」対するクローディアは、絶叫ジェットコースターを降りてきた直後の子供のようにはしゃぎ倒していた。今目撃した恐るべき結果に対し、ゆりとは正反対の興奮を見せている。
「ゆり、今度は三つ同時に落としておくれ」そう言ってクローディアは3本の指を立ててゆりに指示を出す。
「遥、今度は3つ同時だ。いけるよね?」クローディアからの確認に、遥はフッと笑みを浮かべ、自信に満ち溢れた声で答えた。
「マリ、お任せください。この程度、造作もない事です」ゆりは二人の掛け合いを見聞きしながら、胸の奥に妙な引っかかりを覚えていた。
(……え? 何かしら、今、ものすごい違和感を感じたわ。……私は一体、何に引っかかっているの?)ゆりは手元の端末を抱えたまま、不可解な胸騒ぎの正体を探るように、小さく首をかしげるのだった。




