4-5 マグレブ・フィールド(磁気浮上)の真実
4-5 マグレブ・フィールド(磁気浮上)の真実
ゆりが深い思考の海に沈んでいる間に、クローディアの知的好奇心は既に次のステップへと移行していた。
「よし遥。さっき実験室で、ハンマーを細切れにした挙げ句に消滅させたアレ……あの浮いているパーツを、今度は飛ばして見せてくれないか?」身を乗り出して催促するクローディアに、遥は淡々と応じた。
「分かりました、マリ。これで良いですか?」遥が静かに呟くと同時に、彼女が装着する『装甲シラユキ』の各部から、複数の装甲パーツが静かにパージされた。
パーツ群は重力を拒絶するように空中に浮かび上がり、そのままピタリと静止する。その異様な光景に気がついたゆりも、慌てて会話に加わった。
「本当に浮いているわね……。一体どういう原理なのかしら?」ゆりは純粋な独り言のつもりだった。しかし、ナノマシンによって強化された遥の聴覚は、その微かな呟きを正確に捉えていた。
「はい、ゆり。これは『電磁気力・磁気浮上』を発生させて浮いています」開発者である自分たちを差し置いて、当の本人からあっさりと正確な理論が開かされ、クローディアとゆりは思わず顔を見合わせた。
電磁気力・磁気浮上――それは地球の磁場、あるいは遥自身が展開する局所的な磁界と反発し合うことで成立する制御理論だ。
ブレードと遥のスーツの間に強力な磁気回路を形成し、リニアモーターカーの要領で完全な浮遊状態を作り出す。
この機構の恩恵により、常識外れの超高速移動や、まるで目に見えない糸で操るような複雑怪奇な三次元軌道を描くことが可能となる。
ただし、激しい磁界の干渉により、ブレードが駆動するたびにかすかな放電現象(青い火花)や、高周波の電子音が発生するという隠密上のデメリットも併せ持っていた。
「ふふふ、遥! もう最高だよ! いやあ、今日は驚かされてばかりだね!」クローディアは愉快そうに大笑いする。ゆりもその笑顔につられるように、苦笑いを浮かべて肩をすくめた。
「そうね。私たちが解析を始める前に、被験者本人から答えが出てくるなんて。完全に裏をかかれたわ」




