4-1 繋ぎ目なき純白の外殻
4-1 繋ぎ目なき純白の外殻
クローディアとゆりは、目の前で静かに佇む『天野 遥』――そして彼女が纏う純白の外殻『シラユキ』の本格的な検証へと、早速取り掛かることにした。
二人は息を詰め、遥の全身を様々な角度から観察し、時にはその滑らかな白い装甲へと直接手を触れながら、入念に構造の確認を進めていく。
「――変ね。どれだけ探しても、パーツの繋ぎ目がどこにも無いのよ。これ……一体どうやって着脱しているのかしら?」コンソールの拡大画面を睨みつけながら、ゆりが不思議そうに首を傾げた。彼女が困惑するのも無理はなかった。
これまでの凄惨な実験において、試験体たちは再生するたびに装甲をも元通りに復元させていた。
だが、それはあくまで「破壊される前の構造」に物質がそのまま戻っているだけに過ぎない。
人間が身に着けて戦う実戦兵器である以上、背部や側面などの目立たない隙間に、固定用のバックルやファスナー、あるいはボルトではめ込むための『物理的な仕掛け(アタッチメント)』が必ず存在していたはずなのだ。
しかし、このシラユキには、そうした人工物特有の切れ目が一切見当たらなかった。
生体融合を経てナノマシンが自律進化を遂げた際、システム自体が「強度の低下を招く不要な繋ぎ目」を完全に廃止し、一枚の完璧な連続装甲として再形成した――そうとしか考えられなかった。
「ふむ……」クローディアは深く頷き、目の前に立つ純白の少女を見上げて声をかけた。
「遥。その装甲を、一度外してみてくれないか?」
「はい、マスター。装甲を解除します」遥が滑らかな声音で応じた、次の瞬間だった。
一体化していたはずの純白の装甲が、まるで意思を持ったかのように前後に美しく一線に割れた。
カラン、カランと硬質で乾いた金属音を響かせ、重厚な外殻パーツが遥の足元へと綺麗に崩れ落ち、床へとうず高く積み重なっていく。
装甲を自ら解いた遥は、山となった純白のパーツから静かに一歩横へと踏み出した。
そして、無表情のまま、衣服の代わりに肌に密着している黒いカーボン製のアンダースーツの襟元に手をかけ、それすらも躊躇なく脱ぎ捨てようとした。
「遥、スーツはそのままでいい」予想外の忠実すぎる挙動に彼女の動作を制止した。
「――はい、マスター」遥は脱ぎかけようとしたスーツの襟元からすっと手を離し、元の位置へと綺麗に戻す。
そして何事もなかったかのように、黒いタイトなスーツに身を包んだ状態で、再び静かに次の命令を待つ待機状態へと移行するのだった。




