2-15 完璧な燃費と首筋の死角
2-15 完璧な燃費と首筋の死角
まず執行されたのは、容赦のない耐衝撃試験だった。けたたましい銃声と共に放たれた無数の弾丸を浴び、試験体の身体は一瞬で穴だらけになって崩れ落ちた。
身に纏っていたはずの『ブレードアーマー(仮)』も、その衝撃で粉々に砕け散っている。しかし、実験場に静寂が戻った数秒後、血の海に伏した少女の肉体がビクビクッと激しく痙攣した。
――直後、おぞましい速度で再生が開始される。細胞が蠢き、砕けた装甲の破片を巻き込みながら、彼女は何事もなかったかのようにすんなりと立ち上がり、再び静かに待機状態へと移行した。ゆりが追加した背中の増槽バックパックの効果は絶大だった。
内部に蓄えられた潤沢なマテリアルのおかげで、衣服も、全身の刃も、何一つ欠損することなく完璧な状態で元通りに復元してみせたのだ。
「よし、燃費問題はクリアだね」手応えを感じたのも束の間、続いて行われた『刺突試験』が、その希望を無慈悲に打ち砕いた。
空気を切り裂くような金属音と共に、超高速で打ち出された鋼鉄の槍。それは直撃の瞬間、試験体の『首』を易々と貫通し、そのまま背後のコンクリート壁へと深く突き刺さった。少女の身体は壁に縫い付けられたまま、ぐったりと四肢を脱力させる。
――即死だった。いかに全身を多段装甲で覆おうとも、構造上、どうしても強固なプロテクターを配置できない絶対的な死角が存在する。それは、四肢や首といった「関節の繋ぎ目」だ。
ここを硬い装甲で完全に覆い隠してしまえば、試験体は一歩も動けなくなってしまう。実戦用の兵器として稼働させる以上、可動域のための隙間はどうしても割り切るしかなかった。だが、割り切ったその薄い隙間に、運悪く攻撃が吸い込まれれば結果は明白だった。
どれほど新型ナノマシンの生存維持能力が進化しようとも、中枢神経が走る『首』を完全に破壊されて即死してしまっては、ナノマシンに再生の命令を下すことすら叶わない。
ただの物言わぬ肉塊として、死を迎えるしかないのだ。
「……あーあ。せっかくマテリアルの効率は上手くいったのに、これじゃあ意味がないじゃない」あまりにもあっけない実験の幕切れに、モニターを見上げていたクローディアは、心底がっかりしたように深いため息をつくのだった。




