2ー13 全身刃の装甲(ブレード・レイヤード)
2ー13 全身刃の装甲
ゆりの至極まっとうな指摘によって、決定的な大ポカに気づいたクローディアだったが、すでに後の祭りであった。しかし、そこは常人の常識が通用しない天才である。
クローディアは一瞬で、実に見事な「開き直り」を見せた。どうせ間違ってしまったのなら、とことんまで間違った方向に突き抜けてしまえ、という悪魔的思考へのシフトである。
せっかく完璧に作り込んだあの重厚な外装を、今さらバラして作り直すなんて絶対に嫌だ。そう考えた彼女が導き出した力技の解決策は、あろうことか「装甲の隙間(中層)に、無理やり武器を仕込む」という狂気のレイヤード(積層)構造だった。
まず、一番内側に人間を模した『試験体』を配置し、その肉体をカーボンファイバー加工のインナースーツで包み込む。
その上から、本来の目的であった拡張用のハードポイントを追加したプロテクターを装着させる。そしてクローディアの暴走はここからだった。
そのプロテクターの上へ、あろうことか強固な「刃」を直接追加した装甲を重ねたのだ。暗殺者の隠し武器である手甲鉤をヒントに、拳を覆うインドの短剣「カタール」の形状を装甲の一部として完全に一体化・形成させた特注の武装装甲である。
そしてさらにその上から、先ほど「失敗作」と称されたパワードスーツ風の重外装を、何事もなかったかのようにガサリと着せた。
しかも、その刃の仕込みは右手だけには留まらなかった。右肩、左手、左肩。右脚に右足、左脚に左足。右腰と左腰。右胸と左胸。果ては、背中の肩甲骨にあたる左右の部位にまで、あらゆる装甲の隙間に無慈悲なブレードをこれでもかとマウントしていく。
――右を向いても左を向いても、全身刃だらけ。それは、少しでも体を捻って動かそうものなら、敵に接触する前に間違いなく「自分の刃で自分の肉体をズタズタに自傷する」であろう、兵器としての安全性をドブに捨て去ったあまりにも歪で凶悪な姿だった。
あまりの尖りすぎた仕上がりに、それを見たゆりは(ああ、また始まったわ……)と心の中で盛大に溜め息をついた。
もはやここまで来たら、何を言っても梃子でも動かない。ゆりはクローディアを好きなだけ暴走させておこうと諦め、苦笑しながら、自分自身のナノマシン構築の仕事へと淡々と専念するのだった。




