2-11 ハードポイントと複合装甲(コンポジット・アーマー)
2-11 ハードポイントと複合装甲
クローディアはホログラムモニターから視線を外すと、隣のゆりへ向けて静かに声を掛けた。
「ゆり。やはり、武器がなくなっているんだ」
「待って。今、直接ログと映像を確認してみるわ」ゆりは素早くコンソールを叩き、実験場の高解像度カメラの映像をメインモニターへと映し出した。
「……本当ね。信じられないくらい、いっぱい転がっているわ」引きで映し出された実験場の床には、少女たちの血の海に混ざって、彼女たちが持っていたはずの片手剣や小盾が、無残に、けれど大量に散乱していた。
今までは実験終了後に「まとめてスクラップの残骸」として武器ごとプールへ回収していたため、修復された個体が『手ぶら』になっているという事実に見落としが生じていたのだ。ゆりが次々とカメラの視界を切り替えていくのを、クローディアは腕を組んで険しい表情で見つめていた。
「やはり、強い衝撃を受けるか、意識を失った段階で手から離れて落としているのか……」
「おそらくそうね。試験体の防衛本能、あるいは生命活動の一時停止に伴って、指先の握力が完全に消失したのよ。たまたまグリップを握ったままの姿勢で倒れた幸運な子は、蘇生後も武器を保持できているみたいだけど」ゆりは画面を睨みながら分析を口にする。
「そうすると、物理的に手から絶対に離れない武器にするか……? いや、それでは戦況に応じた武器の切り替えやマテリアルの運用の面で、かえって不便極まりないな」クローディアが難色を示すと、ゆりはフッと不敵な笑みを浮かべた。
「それなら――さっきの紫苑さんと唯ちゃんのガールズトークから、最高のヒントをもらった面白いネタがあるわよ」ゆりはそう言って、コンソールの横に置いてあったあのアナログなメモ帳を、パラパラと小気味よく捲ってみせた。
ゆりが提示した改修案は、試験体の全身の装甲に『拡張用のハードポイント(接続架)』を設けるというものだった。刀身を直接手に固定するのではなく、装甲の各部に武器やシールドをマウントできるシステムを構築する。
構造が複雑化する分、一時的に装甲そのものの絶対強度は下がるかもしれない。だが、丸腰になるリスクを考えれば、武装のストックや現地での保持という運用面の向上は、それを補って余りあるほどの計り知れないメリットがあった。さらにゆりは、このハードポイントの追加に伴い、全身の防弾プロテクターの設計にもドラスティックなテコ入れを敢行する。
従来の強固な装甲の上から、さらに異なる特性を持つ追加装甲をレイヤード(積層)して防御力を極限まで引き上げる――すなわち『多段装甲』、あるいは『複合装甲』と呼ばれる最先端防護技術の導入である。
「装甲の容積が増えるということは、そこに充填できる『ナノマシンの絶対保有量』も劇的に増加するわ。そうなれば、さっきの高速完全修復の燃費問題も、今よりずっと安定するはずよ」ゆりの言葉に、クローディアの瞳に再び天才特有のぎらついた光が戻ってくる。
二人の頭脳の中で、弱点を克服した『次世代型試験体』のビジョンが、確かな期待とともに爆発的に膨らんでいくのだった。




