2-10 丸腰の不死者(アンデッド)
2-10 丸腰の不死者
完全修復を遂げて直立した待機状態の個体たちは、容赦なく大型ロボットアームに鷲掴みにされ、そのまま武装した状態で冷たい調整槽の中へと再び放り込まれていく。
一方で、完全に生命活動が停止した個体は、いつも通りベルトコンベアに乗せられ、水しぶきを上げて分解用プールへと流し込まれていく。
想像してみてほしい。少女の姿をした生きた人間が、無機質な機械アームに捕まり、液体の満ちた巨大タンクの真上でゴミのように手放されるのだ。
そんな狂ったシミュレーションが、部屋のあちこちで同時に繰り広げられている。常人が見れば我が目を疑い、発狂するような光景だろう。
だが、観察室の二人の関心は、すでに次の課題へと移っていた。回収された試験体たちが調整槽のなかで再び深い眠りにつく中、クローディアはホログラムモニターに映し出された最新の実験データを凝視し、ある「奇妙な共通点」に気がついた。
「……ゆり。ほとんどの個体が、両手の武器と盾を『失った状態』で生還している」実験の整合性を保つため、途中から彼女たちは試験体の右手に全長70センチメートルの片手剣を、左手には30センチメートルほどの小盾を固定して持たせていた。
肉体や衣服がどれほど完璧に再生しようとも、攻撃を受けて倒れ、意識が混濁してから蘇生するまでの過程で、武器はとうに両手から離れ、実験場の冷たい床に転がったまま置き去りにされているのだ。どれほど絶望的な致命傷を負おうとも、時間をかければ肉体を完全に元通りに再生することはできる。
だが――『武器を失う』ということは、戦場において、継続的な戦闘能力を完全に喪失することを意味していた。
たまたま蘇生した場所のすぐ近くに武器が落ちていれば、拾い直すこともできるだろう。だが、激しい戦闘の最中、爆風や衝撃で武器が遥か彼方へ吹き飛ばされたり、あるいは何らかの形で武装そのものを完全に破壊・紛失してしまった場合はどうなるか。
丸腰のまま、修復能力だけで敵の猛攻を耐え続けろとでも言うのだろうか。その最悪の光景を、クローディアは精緻な頭脳のなかで瞬時にシミュレーションし――そして、冷徹に一言、こう呟いた。
「無理だな」圧倒的な不死性を証明した直後に突きつけられた、兵器としての決定的な敗北。二人の天才は、次なるブレイクスルーの必要性を痛感していた。




