2-8-2 HIMATプロジェクト:最奥の創世記
2-8-2 HIMATプロジェクト:最奥の創世記
「やっほー、マリ姉! 進捗はどう? 順調に進んでる? 今日はたまたま手が空いたから、紫苑姉と一緒に様子を見に来ちゃった。ほら、マリ姉が大好きなオヤツもいーっぱい持ってきたよ!」部屋に飛び込んでくるなり、クローディアに勢いよく抱きついたのは天野唯だった。
天真爛漫という言葉がこれほど似合う女の子もいないだろう。誰からも無条件に愛される、太陽のように明るい性格。クローディアも唯の来訪を心から歓迎し、二人は一瞬で楽しげな弾んだ会話を始めた。そんな二人を「仕方ないわねぇ」と困ったような、けれど愛おしそうな眼差しで見つめながら、もう一人の来客がゆりの方へと歩み寄ってくる。
「ゆりさん、お忙しいところにごめんなさいね。唯とたまたまタイミングが合ったものだから、少し様子を見に来させてもらったのよ」申し訳なさそうに、けれど上品に微笑みながら話しかけてきたのは、天野紫苑だった。この研究所において、最高機密として極秘裏に進められている『HIMATプロジェクト』。
その中枢たる天野研究所の最奥ともなれば、いかに天野の一族といえど、そう簡単に出入りできる場所ではない。そんな厳重な警戒区域に彼女たちが立ち入ることを許されているのは、この二人がプロジェクトにおいて「絶対に外せない超一級の人材」だからに他ならなかった。
いや、より正確に言うならば、この二人の天才がいたからこそ、今あの調整槽のなかで眠る試験体たちが存在しているのだ。天野紫苑――天野宗次郎の娘であり、若くして医学界の最高権威にまで登り詰めた天才医師。天野唯――同じく宗次郎の娘であり、紫苑の妹。
彼女もまた優秀な天野の一員であり、若くして遺伝子工学の最先端をひた走る気鋭の研究者。そして、クローディア・マリ・天野は、天野総一郎の娘。つまり紫苑と唯にとって、クローディアは従姉にあたる関係だった。
年齢が近かったこともあり、幼い頃から三人でよくつるんで遊んでいた彼女たちは、今や人類の常識を覆す人造生命体の開発チームとして、裏で固い絆を結んでいたのである。




