2ー8 禁忌の三原則(タブー・トライアド)
2ー8 禁忌の三原則
自己修復、自己増殖、そして自己進化――。生命としての究極の三原則を完全にクリアした、恐るべき進化個体たち。それらが怪しげな光を放つ調整槽のなかに並ぶ光景を前に、クローディアとゆりは、完全に「煮詰まった」ような面持ちで佇んでいた。
もはや、科学者としての突っ込みどころが満載すぎて、どこから手をつければいいのかすら分からない。彼女たちは、人類が何世紀もかけても到達できなかったブレイクスルーの壁を、いくつも、そして驚くほど簡単に打ち砕いてしまっていた。
もしこの成果をほんの一部でも世間に発表すれば、ノーベル賞などという栄誉は、それこそ両手で抱えきれないほど容易く手に入ったことだろう。
しかし、これは同時に、人類の絶対的な禁忌を侵して創り上げられた人造生命体だった。あろうことか彼女たちは、その神の領域の生命を、実験という大義名分の下で何百回となく無慈悲に破壊し、使い潰してきたのだ。
もしこの凄惨で狂気的な実験内容が外部に漏れでもすれば、彼女たちが社会的に、あるいは物理的に抹殺されることは火を見るより明らかだった。
それゆえに、この実験は天野財閥の権力の象徴とも言うべき秘密研究所の、さらに最深部に位置する最奥の部屋で、誰の目にも触れぬよう秘密裏に行われているのである。思考が行き詰まった二人は、一度完全に手を止め、頭を冷やすために休憩を取ることにした。ソファに深く腰掛け、淹れたての紅茶でティーブレイクを楽しむ。
だが、静かな部屋にカップとソーサーが触れ合う微かな音が響いたその時、二人のプライベートな空間に不意の来客が訪れた。――天野紫苑と、天野唯。
クローディアの従妹で姉妹的な存在であり、彼女たちと同じく凡俗の領域を外れた二人の天才が、静かにその扉を開けたのだった。




