14-19 『圧倒的物量と、企業の思惑』
14-19 『圧倒的物量と、企業の思惑』
シラサギの試験で人類未踏の領域に踏み入っている二人の隊員とは別に、場面は第一試験班へと戻る。
コンバットワーカー(CW)運搬車両が三十台。当然ながら、その荷台にはコンバットワーカーがそれぞれ搭載されている。
さらに、操縦員・整備員輸送車が四台。建設資材運搬車が十台。大型機材運搬車が十台。交換工具・予備部品車が五台。
バッテリー搭載車が十台。回収・修理用車が五台。指揮通信車が三台。炊事・宿営車が五台。
その総数は、実に八十台を超える。
それは訓練へ向かう車列というより、小規模な前線基地を丸ごと移設するかのような凄まじい規模であった。
コンバットワーカーは、大容量バッテリーによって駆動する機体である。この機体の動力源は「交換式電池」方式が採用されていた。
巨大な電池を詰め込んだランドセルを背中に背負っていると想像してもらえれば分かりやすいだろう。
作業中に電池残量が低下すれば、機体は作業を一時中断してバッテリー搭載車へと戻る。
そこで使用済み電池を取り外し、充電済みの新しい電池へと交換することで、直ちに作業へ復帰できる仕組みだ。
そのため、第一試験班にとって重要なのはコンバットワーカー本体だけではない。
十台ものバッテリー搭載車こそが、三十機のコンバットワーカーを休みなく稼働させるための生命線なのである。
目的地の山間部へ、巨大な車両群が次々と到着していく。
「各機、到着次第CWを起動させろ!」
「遅れるな、キャリア上げろー!」
運搬車両から降りた運転手たちが、荷台に積載されたCWをリフトアップしていく。
「各員は機体にすぐさま搭乗し、起動準備!」
CWを降ろしている最中にも、山道からは後続車両が到着し続けている。
下ろされたコンテナには、CW用の大型シャベル、油圧ブレーカー、伐採機、資材把持用マニピュレーターなど、多種多様なオプションパーツがズラリと並んでいた。
「隊長。一個小隊分の機体と付属するオプションパーツまで貸し出してくれるとは、篠崎重工も太っ腹ですね」
その光景を見て、若い隊員が感心したように言う。
「まぁ、それだけこの計画に大きな利益を見込んでいるんだろうな」
隊長は周囲を見回した。次々と展開される車両群。
整然と並び立つ三十機のコンバットワーカー。
そして、山肌へ向かって次々と運ばれていく大量の機材。
「それに、競合会社の機体には絶対に負けないという自負もあるんだろう」
篠崎重工は、単に三十機を気前よく貸し出したわけではない。
この試験が成功すれば、陸上自衛隊への正式採用だけではなく、全国で急ピッチに進められているインフラ整備事業への全面的な採用も見込めるのだ。
三十機のコンバットワーカーと各種オプションパーツを無償で貸与したとしても、その先には何百機、何千機という莫大な受注が待っている。
隊長の読みは決して間違っていなかった。これもまた、企業にとっては立派な「営業活動」の一環なのである。
山道には、未だ車列の最後尾が見えない。
先頭車両が到着して十分以上が経過しているにもかかわらず、後続車両は途切れることなく山間部へと姿を現し続けていた。




