14-18 『白銀の神、時速600キロの超奔流』
14-18 『白銀の神、時速600キロの超奔流』
8、9と出力を上げ、ついに10まで引き上げたとき、シラサギはすべてのリミッターを完全に解放し、その最大限の力を爆発的に発揮する。
その姿はまばゆい白銀に輝き、まるで神々しいまでの威容を誇る。
もはや速度だけではない。その肉体から繰り出されるパワーもまた、一切の妥協なく極限まで引き出されていた。
ただ今回は、広大なオーバルトラックをひたすら走っているだけの状態だったため大きな問題にはならなかったが、
もしこれで別の複雑な動作や戦闘機動を行っていたならば、
人間の神経反射速度が到底追いつくはずもなく、
かつてのあの動画のような凄まじい破壊を引き起こしていたことだろう。
いかに高速な運動中の衝突回避ができようとも、
その身体から放たれる一撃一撃のパワーまでは、
人間側が制御しきれないのである。
これを完全に使いこなし、意のままに制御できるのは、オリジナルの遥ただ一人であった。
かつてナベさんがクローディア(マリ)に「一体誰にこのテストを頼んだんだい?」と鋭く突っ込まれ、冷や汗をかきながら答えに窮した記憶は、まだ記憶に新しいところだ。
さて、そんな狂気のオーバルコースで命がけの疾走を続ける2人はと言うと――。
「ははは、もう慣れたわ! 俺たちは人類未踏の世界に足を踏み入れているんだ。これは歴史的な快挙だぜ!」
「そうだな、一時は死ぬかと思ったが……もうこうなると、一周回ってすっかり慣れちまったわ!」
あまりの過酷すぎる極限環境に置かれ、2人はもはや完全に順応(あるいは壊れて)しまっていた。
例えるなら、かつてステイプレイション2で発売された名作レースゲーム『GT2』を思い出すとわかりやすいかもしれない。
あのゲームには「パイクスピークバージョン」と呼ばれる異様な車両が登場し、その当時としては度肝を抜く強烈な加速力でプレイヤーの脳裏に鮮烈な記憶を植え付けた。
そのメカニズムは、なんと前輪と後輪のそれぞれに専用エンジンを搭載するという、狂気の構築を持った車両だったのだ。
これらは、アメリカ・コロラド州で開催される過酷なヒルクライムレース「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」で勝利を掴むために特別に開発されたものだった。
そして、『GT5』などに登場した『X2010』という究極の架空車両。
パイクスピーク仕様車も驚愕の速さだったが、いかんせんコーナリングに癖があった。
しかし、このX2010は文字通り「常軌を逸したコーナリング」をも可能にし、しっかり使いこなせればどんなコースレコードでも簡単に叩き出すことができた。
シリーズをやり込んだ人なら、あの画面が歪むような圧倒的なスピード感を思い出してもらえるだろう。
彼らが今いる世界は、まさにそのゲームの画面を現実にしたような場所だった。
そして、彼らが今まさに疾走しているその速度は――なんと時速600キロに達していた。
もはや自動車という枠組みを遥かに超越した、航空機にすら肉薄する領域である。
その疾走する光景は、かつて特撮作品『機甲刑事メタルジャッカル』に登場した「シルバージャッカル」の高速機動をありありと思わせるものだった。
白銀の機体を強烈に輝かせながらオーバルコースを駆け抜けるシラサギは、もはや人智の枠組みを完全に踏み外した、神々しいまでの怪物(存在)そのものだった。




