14-14 『風を纏う者たち、禁忌の40%』
14-14 『風を纏う者たち、禁忌の40%』
「はぁ……レベル4だと……? 冗談じゃない……。これ以上は無理だ……」
「いや……まぁ……命令だからな。やるしかない……んじゃないかな」
2人は軍の命令に従い、意を決してレベル4へと切り替える。
オーバルトラックを疾走する2人の速度は、さらに爆発的な跳ね上がりを見せた。時にして、なんと時速240キロ。
もはやこの速度域は、トップクラスのレーサーやレーシングカーでなければ体験できない領域である。
しかも、レーサーたちが車両という媒体を介しているのに対し、この2人は「自分の肉体そのもの」で走っているのだ。
人類史上、誰も成し得なかった世界初の体験をしていることは確実だった。
だが、これほどの狂気じみた超高速であっても、誰一人として転倒することはない。
時速240キロという凄まじい風圧と速度の中で走っているにもかかわらず、2人の姿勢は驚くほどに安定していた。
それは、決して偶然の産物などではない。
あの凄惨なビデオ事件の後、クローディア(マリ)が最悪の事態を防ぐため、密かにシステム内部へ組み込んでいた安全機構が働いていたのである。
人間側が到底扱い切れないと判断した場合、機体が自動的に姿勢制御へと介入する。
つまりシラサギは、暴走する搭乗者を守るために、自ら献身的に補助を行っていたのだ。
「ひひひ……俺は……風になる……! 風になるんだぁっ!」
「はっはっはっ……! なにを……馬鹿なこと……言ってるんだ。いや……しかし、俺たち……本当に風になってるよな……!」
そのあまりにも常軌を逸した光景を、管制室から固唾を飲んで見守っていた試験官たちは――開いた口が塞がらなかった。
「――ただいま、両名ともレベル4に突入しました」
「ほう……! これは凄まじいことだな。一体、現在の速度はどれくらい出ているのだ?」
「はっ……計測データによると、現在の速度は――時速240キロを記録しています」
「なんだと……!? そんな速度が出ているのか。しかも、自分の足で走っていながら転倒せずに……だと? いったい何が起こっているんだ……?」
驚愕する試験官たちをよそに、シラサギが解き放ったその驚異的な性能は、まだシステム全体の「40%」を解放したに過ぎなかった。




