14-11 『十五秒の惨劇と、忘却の封印』
14-11 『十五秒の惨劇と、忘却の封印』
巡回中だった訓練員の一人が、背後にわずかな違和感を覚えた。
振り向こうとした瞬間、首筋に腕が回る。
次の瞬間には視界が反転し、床へ叩き伏せられていた。
何が起きたのか理解できないまま顔を上げると、隣にいた仲間もすでに同じように拘束されていた。
入口にいた2名は、反応する間もなく瞬く間に制圧された。
「1階クリア」
「了解」
階段を駆け上がりながら、さらに3名を次々と無力化していく。その間、わずか数秒の出来事だった。
「そのまま人質を確保する」
「残りは任せろ」
当の本人たちにとっては、まるで日常的な訓練の延長に過ぎなかった。
だが、モニタールームで状況を見守っていた管制室の空気は、それとは全く違っていた。
「待て……もう2階にいるのか?」
「違う。すでに人質フロアに到達しているぞ」
「何だって……!?」
モニター越しに映し出された映像を確認した試験官たちは、あまりの出来事に絶句した。
テロリスト役を務める訓練員たちは、誰一人として有効な抵抗すら行えていない。
気付いた時にはすでに背後を取られ、首筋を捉えられてそのまま地面に転がされていたのである。
そして、人質3名の安全確保が無線で報告された時には、残る5名の無力化もすでに完全に完了していた。
その信じがたい光景をモニターしていた試験官たちは、言葉を失い、ただ驚愕するしかなかった。
「計測機器の故障か?」
「いいえ、正常です……。まだ開始から15秒しか経っていません」
「ふむ……名前が『サギ』とか言っている時点でふざけた機体だと思っていたが、性能は化け物じみているな」
「これを全軍に配備されれば、膠着している各地の戦況が一気に覆るかと……」
「ちなみに、例のリミッター解除は試したのか?」
「いえ……どうやら、彼らは【素の(リミッターがかかった)状態】のまま今回の試験を行ったようです」
「ふむ。それなら、本当の『リミッター解除』の試験もぜひやらせたいな。別のメニューを追加するか」
「わかりました。すぐに関係各所へ手配します」
無線を通じて、2人への追加の試験続行が通達された。
「――おっと、本部からだ。次はリミッター解除試験を行うそうだ」
「リミッター解除試験?」
「ああ、そういえば説明されたっけな」
「そういや、すっかり外すの忘れてたわ」
2人とも、自分たちがまだ【10%未満】のリミッターをかけたまま暴れていたことすら、完全に忘れていたようであった。




