2-3 ナノマシン群体武装(ナノ・アームズ)と創世の素体
2-3 ナノマシン群体武装と創世の素体
実験場が混濁した血の匂いに染まる中、無慈悲な破壊試験は凄惨を極めていた。歴史上に実在したあらゆる近接武器や防具のデータを再現し、その耐久度、破損状況、生体への衝撃浸透率といったあらゆる数値が淡々と採取されていく。
そして、予定していた一通りのデータを引き終えたところで、二人はようやく一息入れることにした。ガラスの向こうの実験場では、テストを終えて無残に破壊された試験体たちが、今もベルトコンベアの上を規則正しく運ばれ、水しぶきを上げて分解用プールへと投げ込まれている。
そのおぞましい光景をまるで背景のインテリアのように横目に眺めながら、二人はコーヒーカップを手に言葉を交わした。
「――何かが、決定的に足りない」クローディアは手元のタブレットに表示された、世界最高峰の計測データを睨みつけながら忌々しげに呟いた。
「今まで作った武器や防具……確かにこれらは、強度においても耐久性においても世界一と言っていい代物だ。だが、こんなものであのアノマリーを打倒できると思うかい? いや、確かに何人かの試験体を犠牲に捧げて肉薄すれば、五体のうち一体くらいは相打ちで切り伏せられるかもしれない。だが、そんなものは到底『完成品』とは呼べない。ただの失敗作だ」
クローディアはあからさまに不機嫌そうな表情を浮かべる。その姿は、思い通りにプラモデルを組み立てられずにへそを曲げている子供のようでもあった。
そんな彼女の様子に、ゆりは「仕方ないわね」と苦笑する。まるで我が子の我がままを優しく諭す母親のような声音で、ゆりは言葉を返した。
「そんなに腐らないの。そのために、私があなたの隣にいるんでしょう?」ゆりはコーヒーを一口すすると、悪戯っぽく微笑んでとんでもない提案を口にした。
「じゃあ、こうしちゃいましょう。その限界がある武器や防具自体にも、私の『ナノマシン』を仕込んじゃえばいいのよ」
「……っ!」その言葉を聞いた瞬間、クローディアの瞳が大きく見開かれ、はっとした表情を浮かべた。
「そうか……! 私としたことが、そんな単純な発想に至らないとは。まだまだ錆び付いているね、私の脳細胞も」これだから、ゆりの隣にいるのはやめられない。彼女の突飛で柔軟な機転は、いつも自分の想像力を鮮やかに飛び越え、極上の興奮をもたらしてくれる。クローディアの胸には、瞬時に新しいアイデアの奔流が満ちていった。
「武器そのものをナノマシンの群体で構成する、か。それなら強度の限界も、破損という概念すら超越できる……!」ゆりの一言によって、完全にブレイクスルーを果たした二人。
今度はただのチタンやカーボンではなく、意思を持ち、自己修復し、変幻自在に形状を変える「ナノマシン付与型の武装」の開発と、それを巡るさらなる実験の幕が切って落とされたのだった。




