2-2 創世の屠殺ライン:素体シラユキ開発記録
2-2 創世の屠殺ライン:素体シラユキ開発記録
「実にスマートではないな」モニターに映る無骨な軍隊の映像を見ながら、クローディアが不満げにぼやく。その横顔を見て、ゆりはクスリと苦笑を漏らした。
「仕方ないわよ。実際に戦うのは生身の軍人さんだもの。彼らが扱える範疇の兵器を作らなきゃ意味がないわ」
「いや、私としてはだね。一瞬にして奴らを黒い粒子へと変えるような、圧倒的で洗練された『何か』を作りたいのだよ」
「だから、現時点ではそんな都合の良いもの存在しないでしょ? だからこうして、この子たちに服を着せて、武器を持たせているんじゃない」楽しげに声を立てて笑うゆりの視線の先では、新たな実験の準備が進んでいた。
培養槽から厳かに這い出てきた少女の姿をした試験体たち。彼女たちの白い肌は、次々とカーボンファイバー製の特殊アンダースーツで覆われ、その上からチタンセラミック複合材で形成された防弾プロテクターが装着されていく。
国家予算レベルのコストを完全に度外視した、この研究所だけの特注装備だ。さらに、彼女たちの手には「片手剣」と「小型の盾」が握らせる。全長わずか70センチメートルほどの剣と、直径30センチメートルに満たない小盾。
銃弾と硝煙が飛び交う現代戦において、時代錯誤も甚だしいその異様な装備こそが、彼女たちの設計思想だった。通常、こうした防具の性能試験というものは、人型の粘土やダミー人形に装備を着せて行うのが常識である。弾丸や破片を規定の速度で衝突させて破損具合を見る「耐衝撃試験」。
尖った刃物や錘を落下させて貫通力を測る「刺突試験」。重いハンマーで叩きつける、あるいは高所から落下させて衝撃緩和力を測定する「鈍器・転倒試験」。
しかし、この部屋の光景は、その前提からして狂っていた。武装させた少女たちを実験場に並べ、今しがた並べたすべての「破壊試験」を、彼女たちの肉体ごと直接執行するのである。
この二人に、一般的な倫理観などという概念は毛頭存在しなかった。
クローディアに至っては、「人間が実際に着て戦うのだから、生体に装着した状態でデータを取るのが当たり前だろう」と大真面目に言い放ち、ゆりもまた、「じゃあ、始めるわよ」と軽い調子で開始の号令を下す。
直後、実験場は常人であれば一瞬で目を背け、嘔吐するような地獄絵図へと変貌した。ある個体は無数の銃撃を浴びて蜂の巣になり、ある個体は巨大なハンマーで肉体ごと原型を留めないほどに叩き潰され、ある個体は鋭利な杭で無慈悲に串刺しにされ、ある個体は高所から叩きつけられて、四肢が曲がってはいけない方向へとへし折れる。血と肉が飛び散る凄惨な光景。
しかし、クローディアもゆりも、眉ひとつ動かさない。壊れて動かなくなった試験体を淡々と回収すると、部屋の中央にある分解用のプールへと無造作に投げ込み、ナノマシンレベルで溶解・リサイクルしていく。そして、間髪入れずに次の試験体を培養槽から引き出し、再び実験場へと並べていくのだ。
やがて、いちいち手作業で死体を回収するのが面倒になった二人は、あろうことか大型ロボットアームとベルトコンベアを導入し、その凄惨な「屠殺と解体」のサイクルを完全に自動化させるに至った。自動化によって効率が上がると、二人はさらにデータを集めるべく、装備のバリエーションを試し始めた。
中世の騎士を思わせる重厚な全身フルプレートアーマーを着せることもあれば、逆に急所しか守らない簡易的な軽装を試す。
武器も、1メートルほどのロングソードや、1.4メートルに及ぶ巨大な両手剣を持たせてみたり、盾も60センチメートルの中盾、さらには1メートルを超える大盾へと変更し、どの組み合わせが最も効率よく「肉体を維持し、敵を解体できるか」の狂ったパズルを解き明かしていくのだった。




