13B-44 『過去と未来の交差点、そして日常へ』
13B-44 『過去と未来の交差点、そして日常へ』
「――やぁ、マリちゃん。ちょっと今、時間あるかな? すこし困ったことになってしまってね」
端末のスピーカーから響いてきたのは、聞き慣れた、けれどどこかバタバタと慌てた様子の声だった。電話の主は、天野グループ製造部門の責任者である渡辺譲司――ナベさんだ。
「やぁ、ナベさん。どうしたんだい、そんなに慌てて」
クローディアにとって、渡辺譲司という男は特別な存在だった。
彼女がまだ物心ついたばかりの幼少の頃からの付き合いであり、当時はよく「工場見学」と称して、グループの様々な最先端プラントへ遊びに連れて行ってもらったものだ。
幼い頃から頭脳が突出していたマリの破天荒な行動や突飛な発想。
普通の大人であれば眉をひそめ、烈火のごとく怒っていたであろう数々の「やらかし」に対しても、ナベさんだけはいつも豪快に笑い飛ばしてくれた。
『まぁ、まぁ。子供のすることだからね。大目に見てあげようじゃないか』
そう言って常に味方でいてくれた渡辺譲司は、この世界において数少ない、クローディアという異端の天才の良き理解者であり、温かい保護者の一人でもあった。
――時間は少し遡る。
遥の『D3TVD』による特攻は、あの無限にアノマリーを吐き出し続けていた特殊な次元の割れ目を、文字通り完全に消し飛ばした。
激突の余波により、周囲一帯にはすさまじい破壊の爪痕が残り、まるで巨大な隕石でも落下したかのような惨状と化していた。
そして事実、天野家の絶大な権力によって「隕石の落下による被害」として大掛かりな隠蔽工作が敷かれることとなった。
その後、天野家の面々は遥の案内により、地下の広大な研究施設へと足を踏み入れた。
別次元の遥からもたらされたオーバーテクノロジーの結晶『HIMAT』。
そして、この次元のクローディアが開発し、遥の手によって完成をみた『対消滅エンジン』とその理論。
話し合いの結果、『サギシリーズ』は別次元の歴史と同様にシリーズ製造され、正式な販売・配備計画に乗ることとなった。
しかし、もう一つの『対消滅理論』については、人類が扱うにはあまりにも危険すぎるオーバーテクノロジーであると判断され、世間には公表せず極秘裏に封印されることが決まった。
それは今後、天野グループが独占し、厳重に管理していく最重要機密となる。
そして、遥たちとクローディア、ゆりの三人は、この地下研究所を拠点として、引き続き『サギシリーズ』の開発名目でこの施設を自由に使用する権利を手に入れた。
もっとも、「開発」と言っても、すでに別次元で完成された膨大な実証データが彼女たちの脳内には存在している。
あとは状況を見ながら、それらの設計図を小出しにして発表していくだけの――まさに「イージーゲーム」な日常が、ここから幕を開けたのである。
(Bルート 完)




