13B-42 『超小型対消滅機関・D3TVD』
13B-42 『超小型対消滅機関・D3TVD』
「そうか。それでこの世界に遥が来てくれたんだね。いや、向こうの私……グッジョブだよ」
クローディアはそう言うと、大空へ向かって力強く親指を立て、別次元の自分へ賛辞を送った。
「じゃあ、お礼と言うわけではないが、私の持っている『対消滅炉』の設計図を遥に託そう。もし、向こうの世界の私に渡せるのなら僥倖だね。あー、ゆり。遥へ渡す対消滅炉のデータを持っているなら、君からも送ってほしいのだけど」
クローディアは、HIMATのネットワークを通じて対消滅炉のデータを遥へと流すイメージを頭に浮かべた。
すると即座に、遥からの念話が脳内に響く。
(マリ。対消滅炉のデータを受信しました)
「遥, じゃあ私からも持っている追加情報を渡すわね」
ゆりもクローディアに倣い、自身が構築・保管していた対消滅炉のデータを遥のネットワークへと流し込む。
(ゆり。対消滅炉のデータを受信しました)
「マリ、ゆり、報告です。お二人からいただいたデータと、私が保持している向こうの世界の技術を統合させることで、新たな装備を構築できそうです」
遥は、二人から受け取った莫大なデータを瞬時に演算し、新装備の提案を行った。
直後、遥は右手を前へと突き出す。
その手の先から黒い粒子が収束し、自分とまったく同じ姿をした「分体」の遥を新たに生成した。
新たに出現した遥は、無表情のまま両手を空へと掲げる。
「『ディメンジョン・ディバイド・ドライバー・ツイン・バニシング・ドライブ』」
――空間が歪み、それは空中に唐突に出現した。
遥がこの世界にやってきた次元渡航装置『D3』をベースに、二人から託された対消滅理論を組み込んで生成された究極の機関。
対消滅エンジンを搭載した新型機『D3TVD』の完成である。
「……ッ!? そうか! 固定された巨大施設だからこそ、内部へ転移されて破壊されるというのなら、最初から持ち運べるサイズにしてしまえば良いのか!」
クローディアは、遥が虚空から錬成した『D3TVD』の姿を見て、その設計思想の本質を即座に見抜いた。
何も、自分たちが作っていたような巨大な炉である必要はなかったのだ。
超小型の対消滅炉を構築し、機体そのものに内包してしまえば、アノマリーによる「炉の内部への転移・暴発事故」という最悪の弱点すら克服できる。
まさに目から鱗が落ちるような、天才的なブレイクスルーだった。
そして、この神の如き錬金術と技術的特異点を目の当たりにした天野家の面々はと言うと――。
総一郎も、宗次郎も、紫苑も、完全に思考がショートして呆けていた。
いや、ただ一人、唯だけは別である。
(すごーい! 私もあんなふうにポンって出してみたい!)
彼女の瞳だけは、圧倒的な魔法のような光景に、好奇心でキラキラと輝き続けていたのだった。




