13B-40 『娘の告白』
13B-40 『娘の告白』
「んー、私が説明するより、遥に説明してもらった方が早いだろうね。遥、ちょっとこっちに来て、父さんたちに事の顛末を説明してもらえるかな」
クローディアは早々に説明を放棄し、傍らに控える遥へと丸投げした。
「はい、マリ。承知いたしました」
遥は静かに歩み出ると、四人の前で深々と、そして丁寧にお辞儀をした。
「初めまして。私は遥。天野遥と申します。マリとゆりの『娘』にあたる存在です。以後お見知りおきを」
「娘……!?」という四人の息を呑む気配をよそに、遥は淡々と説明を始める。
「それでは、ご説明いたします。
まず大前提として、私はこことは違う『別次元』から来ました。私のいた世界でもアノマリーによる侵攻が始まっており、それに対抗する『対アノマリー用兵器』として、マリとゆりの手によって生み出されました。
私の姿は人間ですが、ナノマシンと人間を掛け合わせた『ハイブリッド・ヒューマン』と呼ばれる存在となります。私が纏っているこの純白の装甲は『シラユキ』。私と同時に生まれた専用装備です。
この装甲自体がナノマシンで構成されており、物質を分解し、吸収することで自己の資源として回収・変換する機能を持ちます。つまり、アノマリーを分解し、こちらのエネルギー資源として活用できるということです。皆様が先ほどご覧になった、そして今背後で実行しているあの作業も、ただ倒しているのではなく、アノマリーを分解・吸収している過程となります」
流れるような、しかし内容がぶっ飛びすぎている説明に、四人は口を挟むことすら忘れて硬直している。
「さて、皆様が疑問に思われている点を、時系列順にご説明いたします。
まず、この天野研究所が爆発した原因ですが……これはマリとゆりの記憶から抽出した情報となります。お二人が地下で開発・実験を行っていた『対消滅炉』のコアに、運悪く次元の割れ目が発生し、アノマリーが出現しました。結果として炉の隔壁が次元の裂け目によって破壊され、内包していた莫大なエネルギーが暴発した……というのが事の真相です。
その後、私が別次元からこの次元へと跳躍して参りました。どうやら平行世界のようでしたが、マリとゆりに連絡が取れなかったため、この研究所跡へ急行したところ、爆発事故により瀕死の重傷を負っていたお二人を発見いたしました。
その状態を放置すれば確実にお二人に死が訪れると判断したため、私は独断で『HIMAT』をお二人に投与いたしました。これにより、お二人の身体はHIMATと融合し、負っていた致命傷も瞬時に修復され、今に至ります。つまり、お二人は現在、私と同じくナノマシンと融合した存在となっております」
遥は表情一つ変えず、さらに言葉を続ける。
「次に私が取った行動は、お二人を安全に休ませるための拠点の確保でした。
私が居た世界の天野研究所には、地下に広大な研究施設が存在しておりましたので、それを私の能力で『再現(生成)』させていただきました。
爆発翌日に行われた警察や消防の現場検証に対しては、この地下施設に高度なカモフラージュを施し、一切立ち入らせておりません。また、面倒を避けるため、私の演算処理によって各省庁のデータベースにハッキングを行い、事故原因を『老朽化したボイラーの爆発』と書き換えておきました。お二人は簡単な事情聴取を受けた後、そのままこの地下施設へと戻り、就寝されました。
皆様がお二人の行方を掴めなかったのは、この世界には本来存在しないはずの地下施設で休息を取られていたためです。
そして今朝のことになりますが、爆発によって破損・消失していたお二人の所持品を私の方で復元し、お返しいたしました。その中には当然、携帯電話も含まれておりました。つまり、今朝私がお渡しするまで、お二人は物理的に携帯電話を所持していない(連絡が取れない)状態が続いていたのです。これが、皆様へすぐにご連絡できなかった理由となります。
最後に、現在の状況についてです。
今朝、研究所跡地の真上に次元の割れ目が発生しました。しかし、この割れ目は従来のものとは異なり、無限にアノマリーを出現させ続ける特殊な異常事象と推測されます。今現在もあそこからアノマリーが湧き出し続けているため、マリ、ゆり、そして私の三人(と分体たち)で、それらを物理的に処理するためにこの場におりました」
遥は一息にそこまで語り終えると、再び静かに一礼した。
クローディアたちが引き起こした惨劇と、遥がもたらした奇跡と隠蔽工作。
そのすべての事実が、あまりにも理路整然と、四人の前に明かされたのだった。




