13B-39 『修羅の原の団らん』
13B-39 『修羅の原の団らん』
「遥、ありがとう。静かになったよ。これでまともに会話もできるね」
クローディアは背後で繰り広げられる一方的な虐殺劇を一瞥し、満足げに頷いた。
そして、呆然とする四人に向き直る。
「じゃあ、改めて。……まぁ、今見てもらった通り、あそこに次元の割れ目ができてアノマリーが無限湧きしている状態なのだよ。それで、私とゆり、それにそこの遥たちで、湧いてくるアノマリーを処理していたわけだ」
「マリ。お前の説明は色々と飛躍しすぎていて理解できん」
総一郎が、たまらず言葉を遮った。
さすがは天野財閥の総裁にして父親である。
クローディアのマイペースな説明に付き合っていては一生理解できないと悟り、強引に主導権を握ることにしたらしい。
「こちらから順番に質問する。それに端的に答えなさい。……まずは私からだ。今まで一体、何処に居たんだ?」
父親として、まずは最も肝心な所在を問い詰める。
「あぁ、父さん。それはだね、ここの地下に施設があるから、そこに居たのだよ」
「次は私からだ。なぜすぐに連絡してこなかった。一報さえあれば、ここまで大事にはならなかっただろうに」
宗次郎が、苛立ちと心配を滲ませながら尋ねた。
「叔父さん、それについては謝るよ。ただ、連絡する手段が無かったのと……私もちょっといっぱいいっぱいで、そこまで頭が回っていなかったんだ」
「次は私からよ。マリ、ゆりさんも。本当に、どこも怪我はないのね?」
紫苑は、医者として、そして姉としての切実な目で二人の身体を案じた。
「紫苑姉、ありがとう。ゆりも私も怪我はないんだ。……『結果的に』だがね」
「むぅ、マリ姉。やっぱりそれ固いよ。何を着てるのさ。ゆりさんも同じものだし、そこのいっぱいいるお姉さんたちも」
唯は、先ほどぶつかった時の痛みを思い出しながら、純白の装甲を指差した。
「あはは。唯、ごめんね。今はこれを脱ぐわけにはいかないんだ。四人を守るためにもね。強いて言うなら……『対アノマリー用兵器』とでも言っておこうか」
家族からの質問は一巡したが、当然それで納得できるはずもない。
「……質問すればするほど、新たな疑問しか湧いてこないのだが。地下施設だと? そんなもの、こ
の研究所には存在しなかったはずだ」
総一郎が、マリの最初の回答に潜む矛盾を的確に突く。
「それについては後で案内するよ。そこの遥が、一から構築してくれたんだ」
「マリ、じゃあ今朝になって突然携帯電話が起動したのはどういうことだ?」
宗次郎も、腑に落ちない点を追及する。
「叔父さん、それも本当にごめん。単に、今朝になってから遥に携帯電話を返してもらったからなんだよ」
「マリ、ゆりさんも。研究所が爆発したって聞いたわよ。でも、今のあなた達を見ていると無傷のようね。本当に良かったわ」
紫苑は、クローディアの「結果的に」という言葉の裏にある異常性には気づかず、ただ二人が無事であることに深く安堵の息を吐いた。
「マリ姉! その格好、すっごくカッコイイね。僕も着てみたい!」
唯は、まるで特撮ヒーローを目の当たりにした子供のように目を輝かせている。
「唯、ありがとう。でもこれは君には装備できないんだ。あー、でも『シラユキ』のベースになった
『シラサギ』っていう別の装備なら着れるかもしれないから、後で着てみるかい?」
四人から矢継ぎ早に質問攻めに遭い、のらりくらりと答えていくクローディア。
しかし、その平穏な家族の会話のすぐ背後では――1024人の遥たちが、次元の割れ目から吐き出されるアノマリーを淡々と、そして無慈悲にミンチにし続けているのだった。




