13B-38 『修羅の原の再会』
13B-38 『修羅の原の再会』
四人は恐る恐る車を降りた。
凄まじい衝撃音が響き渡る中、目的の人物であるクローディアとゆりを見つけ、早足で近づいていく。奇天烈な純白の鎧を纏ってはいるが、間違いなく探し求めていた二人であることを確認し、四人は心底安堵の息を漏らした。
「マリ、これは一体どういう状況だ?」
真っ先に口を開いたのは総一郎だった。
「あぁ、父さん。ごめんね、今ちょっと手が離せないんだ」
クローディアはそう返事をしながら、左手で鷲掴みにしていたアノマリーを、右手の手刀による高速連撃で瞬く間に細切れの肉塊へと変えてみせた。
「お待たせ、父さん。叔父さんに紫苑姉と唯まで……ん?」
アノマリーを塵に還し、何事もなかったかのように振り返って四人に話しかけるクローディア。しかし、彼らからの返事は無かった。
無理もない。
遭遇すれば死が確定する化け物を、事もあろうに素手で掴み、ミンチにして霧散させたのだ。
その常軌を逸した光景を目の当たりにすれば、いかに天野家の重鎮たちといえど脳の処理が追いつかないだろう。
そんな中、一番最初に再起動を果たしたのは唯だった。
「マリ姉! 心配したんだよ、もうっ! 何処に行ってたのさ!」
唯は涙ぐみながらクローディアに飛びつき、思い切り抱き着いた。
……が、すぐにパッと離れた。
「……マリ姉、それ固い」
どうやらシラユキの強固な装甲が身体に当たり、痛かったらしい。
唯は涙を引っ込め、ご不満な様子でクローディアに文句を言った。
唯のそのマイペースな行動で我に返ったのだろう。
残りの三人もようやく硬直から復帰した。
「ん、んんっ。もう一度聞くが……マリ、一体何があったんだ?」
総一郎は、先ほどの非現実的な光景を見てしまった手前、ひどく歯切れが悪くなっていた。
「マリ、心配したんだぞ。無事なら何ですぐに家に戻らなかったんだ」
総一郎に続き、宗次郎が安堵と呆れを交えて小言をこぼす。
「そうよ、マリ。ゆりさんも。救急車も拒否したって聞いたじゃない。おまけに行方不明になって
……身体は本当に大丈夫なの?」
紫苑が、二人の怪我を本気で案じるように問いかけた。
「はい。皆様、多大なるご心配をおかけしてしまい、誠に申し訳ありませんでした」
ゆりは一歩前に出ると、四人に向けて深く頭を下げた。
そんな家族のやり取りが交わされている間も、背後では遥たちがアノマリーを処理する重い衝撃音が絶え間なく響き続けている。
「遥、申し訳ないけど、うるさいからもうアノマリーを全て片づけてしまってくれ。これ以上調べても新しいデータは出なさそうだし、何より音がうるさくて会話もできないよ」
クローディアは、背後で奮闘する遥たちに「全処理」の指示を出した。
「マリ、分かりました。全ての処理を実行します」
その応答を合図に、遥たちが一斉に「黒い山」の完全処理へと移行する。
それまで蹴り飛ばし、殴り飛ばし、投げ飛ばしていた無数の遥たちが、一斉にブレードを展開し、積み上がったアノマリーの群れへと群がっていく。
――それは奇しくも、かつてデパート事件で警官たちに群がり、絶望を振り撒いたアノマリーの姿を、完全に逆の立場で再現させるような、痛快かつ残酷な光景であった。




