13B-35 『現地へ向けて』
13B-35 『現地へ向けて』
「では、私から説明しよう。今から一時間前、マリとゆり君のスマートフォンから位置情報の確認が取れた」
天野宗次郎が場を仕切り、集まった面々に事の次第を話し始めた。
「こちらから何度か発信を試みたが、応答する気配はない。だが、呼び出し音自体は鳴っているため、端末は生きていると判断できる。そして、特定された位置情報は……あの山中にある研究所。つまり、爆発事故の現場だ」
「え? 待ってください。あの建物は完全に倒壊しているんですよ? 研究はおろか、人すら立ち入れない状況のはずです」
紫苑が即座に矛盾を指摘する。
「あぁ。だが、位置情報は確かにそこを指している。これは紛れもない事実だ」
「ふむ。となると、誰かが二人の端末をそこで意図的に起動させたということか? だが、一体何のために……」
宗次郎の返答を受け、総一郎が険しい顔で顎に手を当て、最悪の可能性を口にする。
「叔父さん、そんな推測はどうでもいいよ! 僕は現地に行って確かめたい。マリ姉とゆりさんが、そこで待っているかもしれないじゃないか!」
総一郎の慎重な姿勢に、居ても立ってもいられない唯が声を荒げた。
「まぁ、唯の言い分ももっともだが……何者かの罠という線も捨てきれんぞ」
「案外、マリがすっかり忘れて放置しているだけじゃないかしら?」
重苦しい空気を読まない、いや、あえて読まないキャサリンが、ふふっと頬に手を当てて微笑んだ。
「ほら、あの子って目先の面白いことに夢中になると、『そんな些細なこと、私は知らん』とか言って放り出しそうじゃない?」
(そして読者が知る通り、キャサリンのこの推測は100パーセント的中しているのである)
「でも、ゆりさんまで応答がないのは不自然よ。あのしっかり者のゆりさんが、連絡を無視するなんて……」
紫苑が反論する。
彼女のゆりに対する信頼と期待値が高いゆえの疑問だが、悲しいかな、そのゆりも抜ける時は盛大に抜けるのだ。
パンッ!
鋭い破裂音が部屋に響き渡った。
宗次郎が両手を打ち鳴らし、過熱しかけた議論を断ち切る。
「まぁ、ここでいくら話し合っていても埒が明かん。唯の言う通り、現地へ赴き、この目で確かめるのが一番早いだろう」
混沌に陥りかけていた場の空気を一刀両断し、天野家の“刃”たる宗次郎が力強く決断を下した。




