13B-34 『集結する家族たち』
13B-34 『集結する家族たち』
天野官邸――天野宗次郎の私室には、主である宗次郎をはじめ、総一郎、紫苑、唯の面々が揃っていた。
理由は一つ。
行方をくらましていたクローディアのスマートフォンが突如として起動し、位置情報が特定されたというのだ。
何らかの事件に巻き込まれたのではないか――そう案じていた矢先の出来事だった。
コンコン、と控えめなノックの音が響き、扉が開く。
「あら、クローディアが見つかったのかしら?」
入ってきたのは、キャサリン・天野。天野総一郎の妻であり、クローディアの母親である。
元は国際線のキャビンアテンダントとして働いていた彼女は、搭乗客だった総一郎に一目惚れされ、熱烈なアプローチの末に結婚した。
理知的な印象が強い総一郎だが、恋愛に関しては意外なほど情熱的であり、今でも重度の愛妻家として知られている。
キャサリンの後に続いて入ってきたのは、天野美和。
宗次郎の妻であり、紫苑と唯の母親だ。
「マリちゃんが、見つかったの……?」
美和の表情は、無事であってほしいという期待と、最悪の事態を恐れる不安が入り交じった複雑なものだった。
「美和、あなたは本当に心配性ね。あの子のことだから、どうせ『面白いものを見つけた!』とか言って、どこかで没頭しているに決まっているわ」
「義姉さん……。義姉さんは、マリちゃんのこと心配じゃないんですか?」
「だってあの子、私に似て好奇心旺盛だから。きっと今頃、目をキラキラさせて遊んでいるわよ。あー、なんて言うのかしら、日本のことわざで言うと『つり糸のきれたのは獲物のイカ』でしょう?」
「義姉さん。それ、『糸の切れた凧』です」
美和がすかさず、キャサリンの絶妙な言い間違いを冷静に訂正した。
「お母さん、叔母さんも。ええ、今ちょうど叔父さんから『携帯電話の位置情報が特定できた』と連絡があって、ここに招集してもらったところなの」
紫苑が、事の経緯を二人に手短に説明する。
「紫苑姉、早く行こう! 僕もう、いてもたってもいられないよ。早く、早くマリ姉を探しに行かないと!」
最愛の従姉の居場所が分かったことで、唯は今にも部屋を飛び出しそうな勢いで急かした。
「唯、落ち着きなさい。それをどうするか、今からここで決めるのでしょう。宗次郎さんから説明があるはずよ」
美和が、逸る唯を優しく、しかし毅然とした声でたしなめる。
かくして、天野家の重鎮と家族たちが一堂に会し、クローディアの足取りを追うための作戦会議が始まろうとしていた。




