13B-33 『裏切りのスマートフォン』
13B-33 『裏切りのスマートフォン』
ゆりがクローディアの後を追って現場に到着すると、暴走状態の相棒はすでにアノマリーの群れと
「じゃれ合って」いた。
(えぇ……マリ、アノマリーの頭を鷲掴みにしてるわね。あ、握り潰したわ。……意外と簡単そう?)
ゆりは、クローディアがいとも容易くアノマリーを駆逐していく姿を見て、うっかり錯覚しそうになる。普通の人間であれば、アノマリーと接触した瞬間に「死」が確定するのだ。
しかし、今目の前で繰り広げられている光景は、その絶対的な力関係が完全に逆転していた。
「いやん、アノマリー君。私の胸を揉むなんてサイテー……とでも言うと思ったか、愚か者め」
(マリ、意外と面白い特技を持っていたのね……)
クローディアのノリノリな一人芝居を見ながら、ゆりは緊迫した戦場にはおよそ似つかわしくない場違いなツッコミを心の中で入れていた。
「きゃー、アノマリー君。私達はまだそんな関係じゃ……とでも言うと思ったか、愚か者め。学習しない奴らだな」
(ぷっ……マリ、本当に面白いわね。アノマリー君って……)
何度も言うが、アノマリーは明確な殺意を持って対象を捕食しに来ているのだ。
しかし、彼女の台詞だけを聞いていると全くそうは思えないのが、いかにもクローディアらしい。
ちなみに、あれでもクローディアはブチ切れている真っ最中なのだから、人間とは分からないものである。
ふと、ゆりは視線を瓦礫の山の頂へと向けた。
そこはちょうど、対消滅炉が設置されていた場所の真上にあたる。
今この瞬間も、次元の割れ目が狂ったように開閉を繰り返し、真っ黒な異形を吐き出し続けている。
無限増殖――言葉の響きこそSFじみているが、現状は最悪と言っていい。
人類を捕食する怪物が、文字通り無限に湧き続けているのだ。
クローディアには悪いが、さすがにいつまでも「生態実験」で遊ばせておくわけにはいかないだろう。何らかの手段を用いてあの割れ目を閉じない限り、この騒動は根本的には収束しないとゆりは判断した。
――かくして、アノマリーの迎撃と次元の割れ目の封鎖に乗り出した二人だが。
二人は完全に失念していた。
遥から返却され、怒涛の不在着信が鳴り響いていたそれぞれのスマートフォンを、電源を入れたまま研究室の机の上に放置してきていることを。




