13B-30 『白と黒の蹂躙』
13B-30 『白と黒の蹂躙』
「遥、周囲の封鎖を頼む。万が一、取材や野次馬が入り込んでいたら早々にお引き取り願おう。まぁ、ここは私有地だから、そう簡単に入り込める場所でもないがね」
クローディアは遥に、不法侵入者がいないかの確認と現場の封鎖を指示する。
続けて、彼女は獰猛な笑みを浮かべたまま告げた。
「もう一つ。アノマリーは絶対ここから逃がすな。――あれは、私の獲物だ」
「はい、マリ。お任せください。獲物はすべてマリのものです。一体たりとも逃しはしません」
遥も「ふんす」と鼻息を荒くし、謎の意気込みを見せる。
クローディアの命令を受け、遥たちはただちに分散して包囲網の形成に入る。
もちろん、クローディアの護衛として付き従う遥たちもいる。
「さあ、パーティーの始まりだ。招かれざる客に、たっぷりと礼をしてやろうじゃないか」
クローディアは大地を蹴り、アノマリーの群れへと向かって駆け出した。
瓦礫の山まで直線距離にして300メートル。その間には森が広がっていたが、クローディアは文字通り「直線」を突っ切った。
立ち塞がる樹木にぶち当たろうが、一切構わず突き進む。『シラユキ』の圧倒的なパワーで体当たりされた木々は、瞬く間にへし折られ、粉々に砕け散っていく。
彼女が駆け抜けた後には、まるで巨大で獰猛な獣が暴れ狂ったかのような真新しい「道」が出来上がっていた。
ゆりと遥たちがその後を追う。
「もう……マリは相変わらず無茶苦茶ね」
イノシシもかくやという猪突猛進ぶりを後ろから見つめ、ゆりは呆れたように苦笑する。
「当たり前だ! 私の研究を潰したばかりか、結果的に私とゆりを一度殺したんだ。もはや何があろうと絶対に許さない!」
普段はおちゃらけているクローディアだが、今回ばかりは腹の底から激怒していた。まさにマジ切れ五秒前、いや既にマジ切れ状態である。
そして、二つの集団はついに邂逅した。純白の装甲と、漆黒の異形。
まさに白と黒の二色が激突する異様な舞台。
「ほう、これがアノマリーか。なるほど……よく分からん」
そう言い放った瞬間、クローディアの右手はすでに最前列のアノマリーの頭部を鷲掴みにし、軽々と宙に吊り上げていた。
アノマリーにしてみれば、突然現れた「餌」に頭を掴まれ、持ち上げられたのだ。
知能があるのなら混乱の極みだっただろう。
「まぁ、潰すがな」
冷酷な宣告と共に、クローディアは右手に力を込め、アノマリーの頭部をあっけなく握り潰した。
「――!!!!」
頭のような部位を失ったアノマリーは、地面に転がって激しくのたうち回る。
それと同時に、周囲のアノマリーたちが一斉にビクンと身体を跳ねさせ、敵意を剥き出しにして一斉にクローディアへと襲い掛かった。
しかし、群れが彼女に届くことはない。
クローディアに飛びかかろうとしたアノマリーたちの前に、幾人もの遥が瞬時に立ち塞がった。
ある個体は強烈な蹴りを浴びてアノマリーの山へと吹き飛び、ある個体は腕で無造作に叩き落とされ、次々とアノマリーの山へ放り込まれていく。
クローディアの周囲には鉄壁の防陣が敷かれ、異形どもは彼女に指一本近づくことすら許されなかった。
勘違いしてはいけない。
これは「戦闘」などではない。
圧倒的な暴力による、ただの『蹂躙』である。




