13B-29 『地下要塞からの出撃』
13B-29 『地下要塞からの出撃』
放射光施設とは、光速近くまで加速した電子の軌道を強力な電磁石で曲げる際、太陽光の10億倍とも称される強烈な光(放射光や硬X線)を発生させて利用する、超ハイテクな大型研究施設である。
原子レベルの物質構造解析や新素材、革新的な医薬品の開発に不可欠な、最先端の科学技術基盤だ。
天野研究所の地下に秘密裏に建造されたその施設は、メインとなる巨大な蓄積リングが直径約500メートル、周長1436メートルに及ぶ壮大なドーナツ状の空間を形成している。
施設全体の敷地面積は約141ヘクタール(東京ドーム約30個分)という、途方もない広さを誇っていた。
その広大な地下施設から地上へと続く搬入路の出口から、一つの集団が姿を現した。
クローディア(マリ)とゆりを先頭に、後ろに続くのは遥――いや、正確には「1024人の遥たち」である。彼女たちは全員、純白の装甲『シラユキ』を纏っていた。
「ほう? ここに繋っているのか。よく出来ているなぁ」
出口は崖の壁面に擬装されており、一見しただけではそれと分からない作りになっていた。
通常は巨大なシャッターで堅く閉ざされている、資材や機材用の出入り口だ。
放射光施設の外縁をぐるりと囲むように環状に作られたこの搬入路は、以前フライヤーの飛行試験を行った場所でもある。
アクセスする地上路も私有地内にあり、外部から直接侵入することは不可能だった。
かつてクローディアたちが地上で研究を行っていた施設は、今は無残な瓦礫の山と化している。
彼女たちが地上に出たのは、その瓦礫から直線距離で300メートルほど離れた場所だった。
その瓦礫の山の上空に、次元の割れ目が生じていた。
そこから「黒い何か」がとめどなく吐き出されている。
神の悪戯か、宇宙の悪意か。偶然の産物と片づけるには、あまりにも異常な事象だった。
通常、次元の割れ目は一度開いてアノマリーを出現させると言われている。
しかし目の前のそれは、開いてはアノマリーを吐き出し、閉じたかと思えば再び開いて吐き出すというサイクルを狂ったように繰り返していた。
先の対消滅炉の膨大なエネルギーに対する、次元からのしっぺ返しとでも言うべき異常事態だ。
吐き出されたアノマリーは、まるで落ち物パズルゲームのように下へ下へと積み上がって蠢いている。
常人が見れば即座に発狂しかねない、おぞましい光景であった。
「あれか……」
次元の割れ目がアノマリーを産み落とし続ける様を睨みつけ、クローディアは不満げに鼻を鳴らした。
「ふむ、聞いていた話と違うじゃないか。一度開いてあの黒いのを吐き出し、閉じたら終わりじゃなかったのか?」
「私も直接あの現象を見るのは初めてね。確かに、あれは異常事態だと思うわ」
憤るクローディアの言葉に、ゆりも眉をひそめて同意する。
しかし、クローディアの顔にはすぐに獰猛な笑みが戻った。
「まぁ、いくら湧こうが負ける気はしないがな。全部倒してしまっても良いのだろう?」




