13B-28 『シラユキの共鳴』
13B-28 『シラユキの共鳴』
「あー、マリ……。私のスマホも同じ状況よ。届いている内容も、恐らくまったく同じなんじゃないかしら」
クローディア(マリ)から見たゆりは、珍しく明確に焦りの色を浮かべていた。
二人は自分たちのスマートフォンを横同士に並べ、まじまじと見比べる。
そして、その画面から発せられる絶望的な現実を前にして、二人の口から出た感想は「やばい」の一言に尽きた。
だが――その緊迫した空気を、突如として別の衝撃が打ち砕く。
地下施設全体を、微かな、しかし紛れもない「揺れ」が襲った。
「む……地震か……?」
クローディア(マリ)が周囲に視線を巡らせ、床の揺れを確認する。
「いえ、これは時空震反応! アラートが出てる……奴らよ。発生場所は……ここ!?」
ゆりは即座に手元のモニターを叩いて解析し、その特定の座標に驚愕の表情を浮かべた。
「ふむ……アノマリー。いよいよ来たか」
ゆりの報告を聞いたクローディア(マリ)の顔に、恐怖の色は微塵もない。
かわりに浮かんでいたのは、極めて獰猛で不敵な笑みだった。
「ちょうどいい。……あの時のお返しに、たっぷりと礼をしてやろうじゃないか……!」
クローディアはそう吐き捨てると、両手を握りしめて力強く拳を胸の前でぶつけてみせた。
「えっ、マリ? どういうこと……? いったい何をするつもりなの?」
ゆりは、今の今まで行方不明の件で焦っていたはずの相棒の、あまりにも戦闘的な言動と態度に疑問符を浮かべる。
「こうするのさっ!」
クローディア(マリ)がそう宣言した瞬間、その身体が眩い一瞬の光に包まれた。
光がスーッと収まったとき――そこには、戦闘形態『シラユキ』を完璧に纏い立ったクローディア(マリ)の姿があった。
「え……? マリ、その姿は……いったい、どういう……?」
ゆりは自分の目を疑った。クローディア(マリ)が一瞬にして、着替えの隙すらないまま別次元の戦闘服へと変貌を遂げたのだから。
しかし、クローディアはその驚愕の問いには答えず、じっとゆりの目を見つめた。
クローディア(マリ)の両目、その瞳の虹彩が妖しく虹色に輝いている。
見つめられたゆりの瞳もまた、共鳴するように両目の虹彩が同じく虹色へと染まった。
「……なるほど。こうするのね」
すべてを理解したとばかりに、ゆりは淡々と呟く。
そして、クローディアが先ほど行ったプロセスを自らの意識の中でトレースした。
ゆりの身体が一瞬だけ光を放ち、すぐに収まる。
――そこには、同じくシラユキを纏ったゆりの姿があった。
『いやさ、これまで何度か「サギ」の装着実験を行ってきたじゃない? 毎回遥に手伝ってもらってどうにか着込んではいたけど……これ、いざ自分一人で装着するとなると、相当の手間と時間がかかって面倒くさかったんだよ。ゆりだって一回着てみたから、あの着脱の煩わしさは身に染みて分かってるでしょう?』
以前、クローディア(マリ)が専用装備の装着の面倒くささを愚痴っていたが――いまここにいるHIMATと融合した彼女たちは、そのストレスを完全に克服していた。
もし、このスマートすぎる変身劇を元の世界のクローディア(マリ)が見ていたら、きっと悔し涙を流しながら駄々をこねていたに違いない。




