1-3 超進化統合体シラユキ:対アノマリー戦闘ドクトリン
1-3 超進化統合体シラユキ:対アノマリー戦闘ドクトリン
世界各地で同時多発的に発生している以上、どれほど国家権力を用いて隠蔽したところで、いずれ情報はネットや口コミを通じて決壊し、漏洩する。そう冷徹に判断したのだろう、ついに政府はアノマリーの存在を公式に全面公開するという苦渋の決断に踏み切った。
だが、その公開直後の世間は、文字通り未曾有の大混乱に陥ることとなった。思い返せば、あのデパート事件の直後、政府が放った最初の公式発表は「大規模な無差別テロ事件」というカモフラージュだった。
あまりにも隠しようのない凄惨な死者数と行方不明者が出ているのだ。事件そのものを無かったことには到底できなかった。
当時の政府官邸に集められた政治家や官僚たちが、深夜まで煙草を燻らせ、頭を大いに悩ませた末に捻り出した、精一杯の「嘘」だったのだろう。しかし今回の発表は、そんな官邸の人間たちがかつて頭を抱えて出した嘘の報告を、自ら根底からひっくり返すような衝撃的な内容だった。
政府の方針が180度変わった理由は明白だ。国家のメンツのために事実を隠蔽し続けて被害を拡大させるよりも、怪物の存在を広く周知し、遭遇した現場から「一秒でも早く即時退避」してもらった方が、結果的に被害の連鎖を最小限に抑えられるという極めて合理的な判断に至ったからだ。
これがもし、日本国内だけで発生している局地的な災厄であれば、彼らはまだ隠蔽を続けていたのかもしれない。だが、海の向こうの世界各国でも全く同様の惨劇が発生しているという冷酷な事実が、政府の背中を強烈に後押ししたのだ。
「……ふぅ。いけないね、話がだいぶ逸れてしまった」クローディアは軽く頭を振って思考の脱線を断ち切ると、握りしめていた機密書類をコンソールの机の上へと放り出した。過去の政治的混乱など、今の自分たちの研究にはさして重要ではない。
重要なのは、このお役所仕事の退屈な報告書の中に、アノマリーを打倒するための最大の「ヒント」が明確に書き残されているという事実だ。
――対象の『頭部』と『手(右腕)』が損壊した直後、黒い粒子へと変化し霧散。「手と頭が千切れたら、個体を維持できずに消える、か……」クローディアの瞳に、マッドサイエンティスト特有のぎらついた探求の火が灯る。
この小さな気づきこそが、後に彼女たちが生み出すことになる究極の合成生命体『シラユキ』、そして『天野遥』の、敵を一切寄せ付けずに超高速でバラバラに解体する凄惨な戦闘ドクトリンへと繋がっていく最初のミッシングリンクであった。




