13B-19 『通知の嵐』
13B-19 『通知の嵐』
「お二人に、こちらをお返ししますね」
そう言って遥は、事故の際に二人が身に付けていた所持品を取り出し、手際よく机の上に並べていく。
その中には、当然のように二人のスマートフォンも含まれていた。
「あっ、そういえば! 爆発の衝撃でもう粉々に吹き飛んでなくなったんだと思い込んでたわ。遥が回収してくれていたのね」
ゆりは自分の私物が戻ってきたことに、ホッと胸を撫で下ろす。
特にスマホには膨大な研究データや雑多なメモが入っているため、これを紛失して一から復元する羽目になるのは面倒極まりなかった。
助かったと言わざるを得ない。
「おー、そう言えばそんなものもあったねぇ」
マリも自分の所持品を覗き込み、すっかり忘れていたとばかりに回収していく。
「はい。お二人のスマートフォンは内部まで完全に破損していましたので、基礎回路から綺麗に直しておきました」
遥は、二人を地下へ回収して衣服を換えた際、所持品もしっかりと回収・保管していたのだ。あの爆発の凄まじさを思えば破損していて当然だったが、遥の手にかかればその程度の修復など朝飯前らしい。
「おー、遥は何でもできるんだねぇ。いやー、本当に助かるよ!」
クローディア(マリ)が軽く笑いながら、スマホの電源ボタンを押し込む。
数秒のブランクを経てOSが起動しきった瞬間――端末は、身の毛もよだつような勢いで通知の嵐を吐き出した。
凄まじい量の不在着信とメッセージの通知。それを見た瞬間、クローディア(マリ)は悟った。
――これは、完全にアカンやつや、と。
二人は、自分たちが置かれていた状況の深刻さを、この時になってようやく完全に思い出したのである。
0日目:研究所にアノマリーが襲来し、対消滅炉が爆発。
1日目:遥に救出されて地下で目覚める。地上では警察や消防が大騒ぎとなり、事情聴取と現場検証で一日中振り回される。
2日目(今朝):目覚めて、遥から私物を返却してもらう。
「おう……これは実に不味いことになっているな。……見事に『行方不明者』の完成だわ」
クローディア(マリ)が画面の数字を冷静に凝視し、自分たちが経過させてしまった時間の重みを振り返る。
「あの後、適当に『ホテルに泊まる』とだけ言い残して行方をくらました状態になっていたんだっけ……。完全に頭から抜けていたね。で、連絡帳を見ると……紫苑姉と、唯と、叔父さんに、父さんまで!? 果ては警察やら、研究所の……って、どうしたのゆり?」
クローディア(マリ)が自分のスマホに並ぶ恐ろしい数の不在着信の波に慄いていると、隣のゆりが青い顔のまま驚愕の表情で完全に固まっていた。
「あー、マリ……。私のスマホも、まったく同じ状況よ。届いているメッセージの内容も……恐らく、一言一句たがわず同じなんじゃないかしら」
いつだって冷静沈着なゆりが、珍しく激しく動揺している。
二人は恐る恐る、自分たちのスマホの画面を横同士でぴたりと並べて見比べた。
そして、その画面から発せられる絶望的な現実を目の当たりにした二人が口にした感想は――。
「「やばい」」
――その一言だけであった。




