13B-16 『事後処理の裏側』
13B-16 『事後処理の裏側』
あの後、事後処理はそれはもう大変な騒ぎとなった。
天野研究所で起きた謎の大爆発。
警察、消防、さらには救急車までが出動し、大量の緊急車両が現場へと駆けつけていた。
しかし、到着した隊員たちは呆然と立ち尽くすことになった。
爆発によって建物は完全に倒壊しているにもかかわらず、火災は一切起きておらず、ただ巨大な瓦礫の山が広がっているだけだったからだ。
職員の生存は絶望視され、ドローンを使った要救助者の捜索が物々しく始まっていた。
この状況になることは火を見るよりも明らかだった。二人の姿を隠し、地下施設を構築した遥の判断は、まさに「大正解」と言わざるを得ない。
そんな騒然とする現場へ、要救助者であるマリとゆりの二人が「ひょっこり」と現れたのだ。
二人は別に隠す様子もなく、「アノマリーが研究施設内部に出現し、炉が爆発した」と堂々と説明した。
結果的に、付近に民家はなく損害も自社の施設のみだったため、特にお咎めもなく、簡単な事情聴取と現場検証だけで事態はあっさりと終了した――と、言うのは簡単だが。
通常、現場の警察や消防、そして検察や自治体などの「現実の捜査・手続きプロセス」に照らし合わせれば、「被害者がいなくても、このレベルの大爆発なら数か月から年単位の大騒ぎになる」のがリアルなところである。
なぜ「ひょっこり現れて即解決」とはいかないのか。
現実の事件処理の観点から、その不自然なポイントを整理してみよう。
「何が爆発したのか」の徹底究明(警察・消防・鑑識)
死傷者ゼロ、近隣被害なしであっても、「テロ」「過失爆破罪」「危険物・特定物質の不法所持」などの疑いがかけられる。警察(公安や機動捜査隊、鑑識)と消防は、「何をどう扱って爆発したのか」を特定するため、何週間も現場を封鎖して鑑識・捜査を行うのが普通だ。
さらに、クローディア(マリ)たちが「アノマリーが出現して対消滅炉が爆発した」と正直に説明しても、警察や科捜研からすれば「アノマリー? 対消滅?」と、支離滅裂な供述、あるいは危険な化学実験事故の隠蔽と受け取られ、精神鑑定や厳しい取調べを受ける可能性が高い。
「なぜ生き残れたのか」の不自然さ
瓦礫の山と化し、ドローンで捜索するほどの現場から「無傷(しかも綺麗な寝間着姿)」でひょっこり現れるのは、警察から見れば不自然極まりない。
真っ先に「実は事故を起こして逃げ出していたのでは?」と疑われるだろう。
遥が提案した「地下施設へ咄嗟に逃げ込んだ」という言い分を通すにしても、「じゃあその地下施設を見せてください」と現場検証を求められる。その時、遥が再現した「完璧すぎる巨大地下施設」を見せれば、「こんな高度な施設がなぜ公表されていない?」「建築基準法違反だ」と別の問題に波及してしまう。
メディアと世間の大バッシング
上空を報道ヘリが飛ぶレベルのニュースになれば、世間やネットは大騒ぎになる。
「謎のベンチャー研究所が巨大爆発」「危険な実験を秘密裏にやっていたのでは?」と叩かれ、行政からは厳しい追究や立ち入り検査、業務停止命令などが下るはずである。
――では、なぜこの絶望的な事後処理が「即解決」したのか?
【理由その1:天下の天野財閥の権力】
そもそもこの研究は、政府の勅命を受けて行っているものであり、国家特区や裏の公的機関との深い繋がりがあった。
天野研究所はもともと「政府や防衛省系の極秘プロジェクト(または特区)」の指定を受けており、事故発生と同時に上意下達で警察や消防に凄まじい圧力(もみ消し・手打ちの指示)がかけられていたのである。
【理由その2:遥による完璧な裏工作(情報改ざん)】
最大の要因はこれだ。1024人に増殖した遥が、その途方もない情報処理能力をフル活用し、警察のデータベースや行政の記録を一斉にハッキング。
爆発の原因を「老朽化した特殊ボイラーの破裂事故」などの無難な偽装書類にすり替え、取調べの捜査員にも「問題なし」と判断させるよう、あらゆるシステムを裏で操作・処理し尽くしたのだ。
【理由その3:巧妙な現場検証の煙に巻き】
「逃げ込んだ地下の入口を見せろ」という警察の要求に対しては、地下施設全体を見せるのではなく、マリとゆりが寝かされていた「六畳の部屋(シェルターの一部)」だけを意図的に見せ、「たまたまここに逃げ込んで助かりました」と主張。その奥への立ち入りは「崩落の危険があるため立ち入り禁止」として、遥たちが物理的にも強固に封鎖してしまったのである。
現実的に考えればどう足掻いても怪しまれ、取調べが長引くはずの極大事故。
それを、政治的なパワープレイと、遥による警察データベースの直接書き換えという力技で、完璧な「手打ち」にしてしまったのだ。
結論。
――遥さん、万能すぎる。




