13B-09 『覚醒のネットワーク』
13B-09 『覚醒のネットワーク』
「先にお二人にはお知らせしておきますね。マリとゆりの体は、あの時すでに致命的なダメージを受けていました。このため、生命維持を最優先とする緊急処置を施しています。――お二人には、ナノマシン『HIMAT』を投与しました。その結果、もうお二人は“普通の人”には戻れません」
遥の淡々とした説明に、二人はぽかんと口を開けたまま固まっていた。
あまりにも非現実的な言葉の数々に、意味が全く理解できなかったのである。
「遥君……済まない。私でも、今の君の言っていることが理解しきれないんだが。まず『HIMAT』って……それは一体何のことなのかな?」
困惑の色を隠せないクローディア(マリ)が、首を傾げながら問い返す。
「そうですね……言葉で説明するよりも、お二人とも私の目を見てもらえますか?」
遥はそう言うと、ふっと微笑み、その両目の瞳の虹彩を虹色へと鮮やかに輝かせた。
その神秘的な光景を見た瞬間、マリとゆりの瞳の虹彩もまた、引き寄せられるように同じく虹色へと輝き始めた。
――そう、光通信である。この場合、「遥通信」とでも呼ぶべきものなのかもしれない。
同じHIMATを搭載したクローディア(マリ)とゆりの身体は、今や遥と同一のネットワークへと直結されていた。
その「遥通信」を介して、脳内に直接データが流れ込んでくる。
それは、異世界のクローディア(マリ)とゆりが歩んできた「サギシリーズ」の開発の歴史そのものだった。
「はははっ、面白い! これは凄いことだ……! さすが私!! そうか、異世界の私はアノマリーそのものを潰す方向に舵を切ったのか! くぅ~っ……そして君、遥君いや――あえて遥と呼ばせてもらうよ。私達の遺伝子を持つ娘なんだね、君は!」
遥通信から一気に流れ込んできた膨大な情報を受け取ったクローディア(マリ)は、まるで子供のように目を輝かせて嬉々としてはしゃぎ出した。
あまりの興奮に、居ても立ってもいられないといった様子でベッドの上で身を乗り出す。
「はぁ~……とても信じられないわね。でも、遥、あなたが今こうしてここにいて、私達は生きている。……これが、何よりの証拠ね」
マリとは対照的に、どこか気圧されたような反応を示すゆり。
いつもの冷静な彼女のようにも見えるが、これでも彼女なりに現在の異常事態に対して猛烈に驚愕している最中なのであった。
「マリ。先程のご質問にお答えしますね。ここはどこか、と尋ねられましたよね。ここは――『天野研究所』です」
遥は思い出したように、微笑みながらマリの疑問へと答えた。
「な、なんだってーーーっ!?」
普段はゆりに語彙力が少ないとツッコまれているクローディア(マリ)だったが、今度ばかりは先ほどの大げさな芝居ではなく、文字通り本気で、心底から度肝を抜かれるのだった。




