13B-06 『目覚めの部屋』
13B-06 『目覚めの部屋』
クローディア(マリ)は、パチリと意識を覚醒させた。
「あぁ……ここは……知らない天井だ。……フフッ、一度言ってみたかったんだよね」
自分でも拍子抜けするほど、声は意外なほど元気に響いた。
どうやら自分はベッドの上に寝かされていたらしい。
身体には清潔な白い掛け布団が掛けられていた。
ゆっくりと上半身を起こし、まずは自分の身体の状態を確認してみる。
着ているのは、見覚えのないシンプルな白い寝間着だった。
事故の瞬間は白衣といつもの服を着ていたはずだから、誰かがわざわざ着替えさせてくれたのだろう。
クローディアはおもむろに上着のボタンを外し、前をはだけて中を確認する。
下着は身に着けていないようだった。
だがそれ以上に奇妙なのは、あれほどの爆風を受けたというのに、身体のどこにも傷一つ残っておらず、見慣れたいつもの綺麗な肌のままだったことだ。
(怪我がない……? そんなバカな話があるか……)
強烈な違和感を覚えたが、まずは状況の把握が先だとばかりに視線を部屋全体へと巡らせる。
そこは、他には何もない殺風景な部屋だった。
広さは畳六畳ほどだろうか。
ふと横に目をやると、自分と同じようにベッドに寝かされている人物がいた。クローディア(マリ)がいつも見慣れている人物――白川ゆりだ。
あの絶望的な瞬間に自分も床へ倒れ込み、ゆりもまたすぐ近くで動かなくなっていたはずだった。
つまり、自分たち以外の「第三者」が回収し、ベッドへ寝かせてくれたということになるのだが――。
そもそも、その推理自体が根本から破綻していた。
なぜなら、あの絶望的な暴走事故の渦中で自分たちが生存できるなど、到底考えられなかったからだ。
あの状況だ。あのまま二人とも命を落としたのだと、自分でも確信していたくらいなのだから。
ゆりだって同様のはずだ。
あの時点で息絶えていたとしても何ら不思議ではなかった。
しかし今、こうして生きて思考を巡らせている自分がここにいる。
ゆりの胸元に視線を凝らすと、規則正しく上下していた。彼女も間違いなく生きている。
(……待てよ。この部屋、どこかで見たことがあるような気が……)
研究所の地下倉庫だったような気もするが、記憶が曖昧で確証が持てない。
クローディア(マリ)がベッドの上で腕を組み、思考の糸を巡らせていると――不意に部屋の扉がコンコンと軽やかにノックされた。
「どうぞ」
反射的にそう答えてしまったものの、自分でも突拍子のない応対だと苦笑する。
だがそれ以上に、この状況でドアを叩いた「誰か」への好奇心が尽きることはなかった。
静かに扉が開き、室内へと入ってきたのは――。




