13B-04 『深淵への挑戦』
13B-04 『深淵への挑戦』
アノマリーとは一体何なのか?
その問いに答えられる者は、地球上にただの一人もいなかった。
ある学者は「外宇宙の悪意ある存在が造り出した生体兵器だ」と語り、
ある学者は「何らかの崩壊事故に巻き込まれ、凄惨に変質した異星の住民だ」と推測し、
またある学者は「並行宇宙で偶発的に発生した異形の生命体だ」と主張した。
だが――結局のところ、誰も決定的な答えを導き出すことはできなかった。
なぜ奴らは、空間の割れ目から吐き出されるように現れるのか。
ある学者は「ブラックホールに呑み込まれた物質が排出されているのだ」と述べ、
ある学者は「悪意ある何者かが無差別にこちらへ送り出しているのだ」と危惧し、
またある学者は「すでに文明そのものは滅びているが、次元を超越する自動装置だけが遺され、無感情に命令を遂行し続けているのだ」と持論を展開した。
しかし――それもまた、真相に辿り着く者は誰一人としていなかった。
(ならば――こちらから向こう側へ乗り込んで確かめてやろうじゃないか)
そんな常軌を逸した狂気の発想を抱き、真剣に研究へ取り組んだ人物がいた。
その名も、クローディア・マリ・天野である。
彼女は、次元の裂け目から排出されてくるアノマリーの記録映像を、何度も、それこそ何百回と繰り返し検証していた。
彼女が目指したのは、現れたアノマリーを退治するという対症療法ではない。
根本的な解決――すなわち、元凶の大本である「次元の裂け目そのもの」を解明し、制御することだったのだ。
まずクローディア(マリ)が目を付けたのは、自然界には極めて稀にしか存在しないと言われる「反物質」だった。
天野財閥の莫大な予算を惜しみなく注ぎ込み、彼女は究極のエネルギープラント「対消滅炉」の建造に着手する。
対消滅炉によって発生させた途方もない莫大なエネルギー。
そこに重力因子を叩き込んで指向性を持たせ、次元の割れ目に向けて直接照射する――。
それによって、次元の穴をこちら側から強引にこじ開けようという、あまりにも大胆で危険な試みであった。




