13A-03 『覚醒とコンペティション』
13A-03 『覚醒とコンペティション』
午前6時。研究室にやってきた遥は、すでにそこにクローディア(マリ)が座っているのを見て驚いていた。
そしていつもの出勤時間である8時過ぎ、ゆりが研究室へと姿を現す。
研究所の自室や一角で寝泊まりしているため、彼女たち全員に「通勤時間」という概念は存在しない。
遥たちは空いている倉庫をいくつか改装し、そこに二段ベッドを運び込んで生活拠点にしていた。
なお、クローディア(マリ)とゆりの身の回りの世話や警護についているのは「オリジナルの遥」である。
たまに他の遥と入れ替わっているようだが、マリたちにはその違いがまったく分からなかった。
普段の遥たちが何をしているかといえば、研究室の実験がない時間には、試験場で自ら「シラユキ」を纏ってお互いに稽古を重ねたり、これまで開発された各種装備や機器を試着して訓練に励んでいるのだった。
「おはよう、マリ。今日は随分と早いのね。どうかしたのかしら?」
ゆりは、いつもならまだ夢の中にいるはずのマリが研究室にいたことを不思議に思い、尋ねた。
「おはよう、ゆり。いやぁ……それがさ、妙に夢見が悪くてね。目が冴えて眠れなくなっちゃったか
ら起きてたのさ」
クローディア(マリ)はやれやれとばかりに肩をすくめ、頭を振って答える。
そして、今朝方見た例の不気味な悪夢の内容をゆりに打ち明けた。
「へぇ、興味深いわね。でも、確かにそういう事態もあり得なくはないのかもしれないわ」
ゆりは細い指を顎に当て、考え込むような仕草を見せる。
「そうだろう? しかも『炉』の研究なんてさ。一体何の研究をしてたんだろうね、私たち」
ゆりの相槌に興が乗ったのか、マリは話を蒸し返そうとした。しかし、ゆりは真剣な表情のまま言葉を継ぐ。
「いいえ、何の炉かは分からないけれど……問題はアノマリーよ。考えてみたら奴らは、文字通り『どこにでも』現れる可能性があるわけでしょう? それこそ、稼働中の原子炉の内部とかにだって……」
ゆりは真顔でマリを見つめながら告げた。
「いやいや……それこそ大惨事どころじゃないだろう! 最悪なんてレベルじゃないよ。……いや、むしろ今までそんな事故が起きなかったことの方が奇跡だったのか……?」
ゆりの鋭い指摘に、マリは考えたくもなかった最悪の現実を再確認させられる羽目になり、顔を青くした。
「こうなると、一刻も早く政府に『SAGI』を正式導入してもらって、対応してもらうしかな
いね」
「あら、知らないのマリ? コンペには我が社のSAGIだけじゃなく、神原重工が開発している『光子甲冑』と、篠崎重工が開発している『ワーカー』もエントリーして名前が上がっているわよ?」
ゆりは「本当に何も知らないのね」と言いたげな呆れ顔で説明する。
「あなたも一応、天野財閥に関わる当事者の一人なんだから、それくらいは把握しておきなさい。もう……!」
両手を腰に当て、まるで母親のようにマリにお説教をするゆりであった。




