13A-02 『悪夢の残滓』
13A-02 『悪夢の残滓』
(ゆり、すまない……。私の研究にさえ巻き込まなければ、こんな事には……。そして、今までありがとう)
薄れゆく意識のなかで、クローディア(マリ)は倒れているゆりへ向け、届かぬ謝罪と深い感謝を心の中で念じていた。
「っ……ハァ……ッ!?」
クローディア(マリ)は自室のベッドからガバッと上半身を起こした。
激しい呼吸とともに全身から冷や汗が噴き出す。
……どうやら、最悪の悪夢を見ていたらしい。だが、あまりにも生々しい映像だった。夢の中の自分とゆりは、間違いなくあの爆発で命を落としたのだろう。
何より「研究中の炉の中心にアノマリーが直接転移してくる」という出来事は、思い返すだけでも背筋が凍りつくほど恐ろしい絶望だった。
冷静になって考えてみれば、あの夢のような惨劇はいつ現実になってもおかしくない事態だ。
いまこの瞬間にも、目の前の空間が裂けて奴らが現れたとしても不思議ではない。
そこに思い至った瞬間、クローディア(マリ)の背筋をうすら寒い怖気が駆け抜けた。
さらに不可解なのは、夢の中の自分たちが「何らかの炉」を研究していたことだ。
(いや……夢の中の出来事だし、あり得ない設定が混ざることもあるか……)
そもそも何の炉だったのか。自分たちはそんな危険な研究など扱っていないはずだ。
ありもしない想像を振り払うように、マリは頭を小さく横に振った。
全身が嫌な汗で濡れていて気持ちが悪い。
ベッドの脇にあるナイトテーブルの時計に目をやると、表示は『4:02』だった。
起き出すにはあまりにも早すぎる時間だ。だが、二度寝をする気にはとてもなれない。
マリは汗を流すべく、寝室を出て浴室へと向かいシャワーを浴びることにした。
温かい湯を浴びたものの眠気は完全に吹き飛んでしまい、そのまま着替えて地下の研究室へと向かう。
薄暗い研究室の休憩所。ソファに深く腰掛け、自ら淹れたブラックコーヒーを啜る。
しかし、頭の片隅には先ほど見た夢の光景が生々しくこびりついて離れず、不快感は増す一方だった。
どれほど考えても答えなど出るはずもなく、解消されない悶々とした思考を抱えたまま、静まり返った研究室でただ時間だけが過ぎていくのだった。




